第1回 2020年4月22日

サステナビリティ部員塾第16期上期第1回が4月22日、オンライン会議zoomにて開催され、40名が参加された。今回は「CSR、SDGs、ESGの基本的な理解」をもとにそれぞれ講義が行われた。企業事例としてはブリジストンのサステナビリティ戦略が紹介された。 (三宅千鶴)
※2011年にスタートした企業のCSR担当者に特化した連続セミナー「CSR部員塾」は、2020年4月より「サステナビリティ(SUS)部員塾」に名称変更された。

第1講 CSR/SDGs/ESGの基本的な理解
森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役 オルタナ編集長)
CSR、SDGs、ESGの歴史的な背景を追い、1987年国連のブルントラント宣言、アナン事務総長の3つの贈り物( MDGs、国連グローバルコンパクト、PRI(国連責任投資原則))、2015年のサステナビリティ元年を経て、MDGsからSDGsへの更なる目標、企業の取り組みについて説明された。
企業ビジネスの関心であった顧客ニーズ、市場ニーズの背景には社会ニーズがあり、今後、更には国際社会、世界のニーズに対する価値創造へのシフトが求められる。とくに現在、コロナ感染症によって世界のサプライチェーン、ビジネスのあり方が大きく変わっている。ポストコロナの世界経済においてその潮流の中で、「サステナビリティ」は益々、企業のあり方を考えるとともにCSRを推進していく為に重要なキーワードとなる。新しいミッションとしては、「社会感度を上げる」こと。それは、その状況下での企業リスクを見極めると同時に、それをチャンスに変えていくことだとされた。サステナビリティ目標を掲げた企業は、更にその目標を実現化する為に、従来のバックキャスティングに加えてフォアキャスティングによる価値創造のプランニングが必要だ。次世代に生き残っていくためには、会社の存在意義を社会的価値に照らし合わせ、サステナブル経営の最上位目標におくことをトップが社内で共有していくことが求められ、企業戦略の根幹となる。

第2講 会社から見た企業の役割/SDGs概論
町井 則雄(株式会社シンカ 代表取締役社長/株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)
町井氏は、前職のNPO、NGOなどソーシャルセクターに資金支援する最大の団体、日本財団(25年間勤務)での経験を経て、現在は、株式会社シンカを立ち上げ、企業におけるCSR活動を直接支援している。同氏は、現在が「人類上もっとも過激な時代」に突入しているとし、コロナ感染症によって世界の二極化が加速している状況を説明した。二極化は、人種(欧米vsアジア)、カネ(貧困vs富豪)、企業(大企業vs零細企業)、テクノロジー(自由vs管理)に見られると指摘している。しかし、グローバルな視点では、「人口増」や「水問題」という人類共通の課題がある。とくに、水資源が枯渇してしまった「アースオーバーシュートデー」に、「先進国の水準で生活をつづけた場合、地球が何個分必要になるかという」という指標は、環境問題に対する危機感を表している。同氏によると、生物多様性が失われる危機は、温室効果ガスのもたらす影響を上回るものである。MDGsの反省として掲げられたSDGsは、地球上の問題解決を途上国の目標から全人類の目標として改めて掲げており、具体的な17つの目標が示された。こういった国際的なトレンドとともに現状を踏まえた上で、同氏は、現在企業が「空前のイノベーションブーム」を迎えており、それがコロナ感染症によってさらに加速されているとした。AIの台頭や国際社会の再編成は、さらに企業の危機対策、リスク管理においてクリエイティビティが求められ、可視ニーズに対して潜在ニーズを洗い出し、一つの正解ではなく、その企業なりの答えを求めていくことが最終的にサステナブル経営を可能とする差別化につながると締めくくった。

第3講 ワークショップ(未理解点の洗い出し)
森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役 オルタナ編集長)
1,2講目の内容について参加者が6グループに分かれて、意見交換し、不明点や更なる質問が投じられた。質問は、CSRやサステナブル経営をどのように会社の本業と結びつけていけばよいか、具体的なCSRへの取り組み例、環境や社会問題について専門性をもつNGO、NPOとのエンゲージメントの持ち方、ESG投資の対象となるための会社評価の指標について、CSRに対するモチベーション向上の為の策など多岐に及んだ。
これらの各グループの質問について、森氏より具体的な企業例やアイディアなどの提案や詳しい説明が行われた。

第4講 企業事例1:ブリヂストン
稲継 明宏(株式会社ブリヂストン グローバル経営戦略・企画本部 サステナビリティ推進部長)
株式会社ブリヂストン(以下、ブリヂストン)はサステナビリティの分野において、先駆的で積極的な取り組みを続けている企業である。稲継氏は、企業として「社会貢献」だけでは、経営陣のCSR活動に対する理解を得ることは難しく、企業戦略の中に潜在的な社会ニーズを顧客ニーズに結び付け、如いてはビジネスに結び付けていくことによって企業のサステナブルな発展が可能だとした。ブリヂストンはグローバル企業の価値と社会ニーズ、顧客ニーズを合わせた「Our Way to Serve」というコンセプトを創造した。「Our Way to Serve」は、サービスの革新と製品製造の革新を両輪に、「ソリューション」と「エンゲージメント」を交互にタイヤのように回転させながら進化させていく、というやり方である。この独自の企業理念を、取引先顧客からサプライチェーンまで国内外に浸透させることを目的とし、企業戦略とともに策定するのには3年の歳月を要したという。その内容は、顧客の信頼性獲得(コンプライアンス)や人権問題への取り組み、資源の調達や使い方まで包括的なソリューションを提示するものである。更に、モビリティー、サーキュラーエコノミー(資源の循環性、生産性)、気候変動などリスクマネージメント等の枠組みによって、ビジネスに関わるステークホルダーとの対話が促進された。いったん、明確になった理念の下で、未来を見据えた企業の成長戦略は、グローバルに設定された後に地域に持ち帰られ、マトリックス的に組織への浸透を図られた。社内のリレーメッセージやチーム毎の小冊子、経営トップの発言の動画を作って巻き込むといったイメージ作りやブランディングによって、従業員への認知を高め、企業文化とサステナビリティの統合を図ったとする好例である。「CSRを目的とするのではなくツールとする」という考えはここでも見られ、サステナブル企業としての経営やビジネス戦略、成長戦略のビジョンの中に取り入れられている。