世界中の消費者の「成熟」

以前のコラムで、欧米の機関投資家の「成熟」に触れたが、同様に、消費者も「成熟」してきている。

海外に菜食主義者の急増

私が個人的に興味を抱いているのは「菜食主義者の急増」である。正確な統計データが少ないのだが、

「菜食主義の現状」

【米国】

約300万人(2009年、人口の1%)→約2,000万人(2017年、人口の6%)

※ミレニアル世代に絞ると39%(2018年)

【ドイツ】

約100万人(2005年、人口の1%)→約800万人(2018年、人口の10%)

【インド】

約4億人(2017年、人口の29%)

【英国】

約930万人(2017年、人口の14%)

【台湾】

約309万人(2017年、人口の13%)

など、欧米だけでなくアジアも含め驚くほど菜食主義者が増えており、世界全体で6億人程度という試算もある。

近年の菜食主義者の特徴として、若年層(Z世代/ミレニアル世代)であることと、厳密な区分ではなく以下のようなグラデーションであるということであろう。

【ビーガン】動物由来(肉/魚/卵/乳製品)を食べない

【ベジタリアン】肉を食べない

【ローミート】なるべく菜食にする

「菜食主義の原因」

また、菜食主義を取る理由として大きく以下3つがあると言われている。

①動物愛護(宗教含む)

②健康増進

③環境負荷の低減

③が出てきたことで、ローミートのようなグラデーション層が増え、結果として「菜食主義者が急増」という事象に繋がっているのではないか。①②③の比率について正確なデータは手元にないが、このような背景を踏まえると、近年急増している菜食主義者のうち、かなりの割合が③であろうというのが私の仮説だ。

余談だが、「ミシュランの環境版」とも言える「レストランの環境負荷を可視化する」団体が、2009年に英国で発足している。

消費者スタイルの激変

「菜食主義だけではない」

本論に話を戻すと、菜食主義者は肉を食べないだけでなく、レザージャケットも毛皮コートも(なるべく)買わない。そしてレジ袋ではなくエコバッグを(なるべく)使う。彼らの急増が、欧米アパレル企業をサステナビリティに向かわせたと考えられる。

結果、パタゴニアは「サステナブルファッションのアイコン」として支持され、その裏ではバーバリーが「売れ残り商品の焼却廃棄」で炎上した。アパレルではないが、2019年5月に米ナスダックに上場した代替肉(植物由来で作った肉っぽいもの)メーカーのビヨンド・ミート社は急成長しいまや時価総額5,000億円(日本企業だと東急不動産が同規模)を優に越えるメガ企業となったが、同様の流れであろう。

「一過性のブームではない」

こういった事象を、定期的に発生する「一過性のブーム」と斜めに見る向きもあろう。事実、80-90年代の「エコ」、90-00年代の「ロハス」は振り返ってみると一過性のブームという色が強かった。しかし、10年代以降のサステナビリティ/SDGs/ESGの流れは不可逆なものであり、一過性のブームとは次元が異なるものであるということを私は断言したい。理由は主に2つある。

1.環境や社会の持続性に関する危機は目前まで迫っており、若年層にとっては「他人事ではない」。2050年に世界人口の4割は自由に水が手に入らない可能性、世界人口の6割以上がマスクなしでは生活できない可能性などが想定されている。

2.ESG投資は既に世界全体の投資総額の30%(3,000兆円以上)を超えており、確実に定着してきている。ESG投資の大半は、「財務要因」と「非財務(環境/社会/ガバナンス)要因」を統合判断する「インテグレーション投資」である。つまり投資判断に際して「非財務要因」を加味することが定着している。

まとめると、

・若年層は「自分事として」サステナビリティへの関心が高い(欧米・アジア)

・彼らはサステナビリティを踏まえた消費行動(食、服など)を取る

・そういった市場ニーズに呼応して、欧米アパレル企業はサステナビリティを強化している

このような傾向が見て取れるだろう。

 


大阪大学(理学部物理学科)卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナブル領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。再生可能エネルギー事業、環境技術の特許売買事業等をライフワークとして継続し、2社の事業売却を経験。京都大学ESG研究会講師(2020年度)。他のコラムはこちら。