今ESG投資が注目される理由

ところで、今なぜESG投資がこれだけ大きく注目されるのでしょうか。

一言で言えば、投資家が資本主義の限界を認識し始めている、ということだと思います。資本主義あるいは資本市場から最大のメリットを受けているのは資本家、つまり、投資家と言えるでしょう。その投資家が資本市場の持続性(サステナビリティ)に危機感を抱き始めているのです。産業革命以降、資本主義は人類に幾何級数的な成長をもたらしてきました。

しかし、ここに来て、投資家は資本主義が次のような副作用をもたらすことに気がつき始めたのです。それらは、

①貧富の格差
②企業を取り巻く負の外部性

①は言うまでもありません。最富裕層85人の資産総額が下層の35億人分に相当する(出所:国際非政府組織(NGO)オックスファム)という信じられない格差が起こっています。
ところで、経済理論の基本的なモデルに、資本収益率は経済成長率より大きいというものがあります。資本の提供者(資本家)は大きなリスクを取っているため、当然リターンも通常の経済活動より高いというものです。資本の多くは富裕層が保有しているため、資本主義はすべての人に高い成長をもたらす一方でますます貧富の格差を拡げてしまうという特性を内在していることになります。そして、今その格差が許容できない水準に達しています。格差に配慮する資本主義が求められているのです。

②は企業が自然環境や社会などの外部環境に与える影響が高まっており、外部環境のリスクが企業にとって大きなリスクになって来ているということです。これまで環境や社会は企業の外にあり、企業は外部環境から自由にメリットを享受して成長して来ました。環境や社会に負荷を与えるビジネスを行っていたとしても、それは許容されてきたのです。
しかし、今やその負荷は限界を超えるようになって来ており、外部環境に配慮したビジネスが必要になっています。つまり、外部性も取り込んだ資本主義が求められているのです。

資本市場から最大のメリットを享受してきた投資家は、今、資本主義を持続させるために、資本市場に対してポジティブな行動を起こすようになったのです。それがESG投資です。ESG投資をサステナブル投資(Sustainable Investment)、あるいは責任投資(Responsible Investment)とも呼ぶのは、これらの考えを反映しているためなのです。

次回は具体的なESG投資手法についてお話ししたいと思います。

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なお、京都大学では「京都大学ESG研究会」を東京・新丸ビルにて開催致しています。(期間:2019年12月~2020年3月、有料)
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京都大学ESG研究会

 


京都大学客員教授、首都大学東京特任教授。専門は投資理論、金融工学。野村證券金融工学研究センター長、執行役を経て、2011年から京都大学大学院教授。2019年から現職。他に、お金のデザイン研究所所長、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の経営委員などを務める。