さて、前回のコラムでは、なぜ丸井グループやファーストリテイリング社などのアパレル企業は、売上にほぼつながらないのにサステナビリティに取り組むのか。受託者責任に反しないのか、と問うた。本稿ではこれについて引き続き考えてみる。

財務戦略(IR)としてのサステナビリティ強化

「サステナビリティ強化をすると、資金調達に有利」

答えの1つは「財務戦略(IR)」だ。「サステナビリティ強化をすると、資金調達に有利(=資本コストを低減できる)」なのだ。欧米の機関投資家は、国内投資家よりも「サステナビリティ目線で成熟(以前のコラムではマルチシグナルと表現した)」している。たとえばPRI(責任投資原則。国連が2005年に公表)に署名する機関投資家は、日本ではまだ少数派だが、欧米では多数派であり、同様にESG投資(環境/社会/ガバナンスを重視する投資)比率も日本に比べて欧米はかなり高い(欧州50%、日本19%)。資金調達において、国内だけでなくグローバルの機関投資家にもアプローチできたほうが選択肢が広がり好都合なのは自明だろう。

更に、あまり知られていないが国内では「環境配慮型融資の利子補充」が環境省主導で既に始まっており、「環境に配慮している企業は低利子でお金を借りられる」という時代になっている。将来的に炭素税など「環境に配慮していないと不利になる」ルールが増える可能性も高い。

「サステナビリティ強化をすると、株価の安定施策に有利」

また、「サステナビリティ強化をすると、株価の安定施策に有利」とも言える。日本株の売買シェア6割以上は外国人投資家であるという(保有シェアは3割程度)。つまり外国人投資家の動きが日本株の値動きや出来高に大きく影響するということであり、株価の安定施策として外国人投資家を軽視できない。売り浴びせによる株価暴落、資金引き上げによる流動性の枯渇等、目も当てられないからだ。

営業戦略(PR)としてのSDGsは「卑しい」のか

財務戦略上、サステナビリティやSDGsは好影響だということを述べてきた。しかし、ブランディングやプロモーションにも好影響をもたらす在り方の構築こそ優先したいと私は考える。なぜなら、事業会社における『利』の源泉は、市場創出であり、売上であるからだ。財務戦略が優秀であれば生存確率は高まるが、新たな経済価値を生み発展・成長に直接つながるわけではない。「売れてないけど、資金調達できるので会社存続しています(P/Lは赤字だが、C/Fは黒字)」では持続可能性はない。

「SDGsを推進するから利益が増える」

投資家ドリブンか、顧客ドリブンか、である。「社会貢献でお金を稼ぐなんて卑しい」という脊髄反射をいったん横に置いて頂くとして、「SDGsをやっているから売上(利益)が増えました」というのがまさに持続可能性であると私は考える。

以前のコラムでも述べたように、

義=地球や社会を持続可能に
利=『義』の実行を持続可能に
義+利=自社が永続的に発展

と考えれば、『義』で『利』を稼いでしまうことが目指すべき循環であろう。

しかし同時に強調しなければならないのは「定量化による検証」が必須であるということだ。それがなければ、言ったもの勝ちのカオスな世界(SDGsウォッシュ)であり、「力なき空論」に過ぎない。

このような仮説を証明するため、私が運営する会社では

・「義」を定量化するデータツール
・「利」に貢献する「義」を特定する解析モデル

を研究・開発しており、義利合一の社会実装を追求している。

 


大阪大学(理学部物理学科)卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナブル領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。再生可能エネルギー事業、環境技術の特許売買事業等をライフワークとして継続し、2社の事業売却を経験。京都大学ESG研究会講師(2020年度)。他のコラムはこちら。