SDGsが共通言語化して久しいが、SDGsで儲けると言うと、いまだに怪訝な顔をする人がいる。「環境貢献、社会貢献でお金儲けするなんて卑しい」という脊髄反射のようなものだろう。しかし、いまや資本主義のルールが変わり、これからの我々は「環境貢献、社会貢献で儲ける」必要があるのだ。このことについては前回のコラムで詳述したのでご笑覧頂ければありがたい。

前稿から引き続き本稿においても、
義=環境や社会や人に貢献すること、SDGs、CSR
利=経済リターンを追求すること、儲けること
と定義し、

義利合一

という概念をキーに筆を進めたい。

SDGsに取り組む国内アパレル企業

近年、国内アパレル企業が続々と、SDGs/サステナビリティへの前向きな意思表明と行動を起こしている。これは欧米アパレル業界における「サステナブルファッションのムーブメント」の影響もあるだろう。服は身近な消費財であり、また広範なバリューチェーンを有する製造業でもあるため、大きな社会的責任を背負うべきという考えも根底にあるのかもしれない。
いまや日本を代表するグローバル企業となったユニクロ(ファーストリテイリング社)の柳井会長は、2019年10月の決算説明会で

「サステナブルであることはすべてに優先する」

と宣言した。言葉だけではなく、製品リサイクル強化、プラスチック包装の大幅削減等、力強く、現実味のある施策を矢継ぎ早に打ち出し実行している。
国内32拠点のファッションビルを擁する丸井グループは、RE100(事業運営に使用する電力を100%再生可能エネルギー由来にするという国際イニシアティブ)に国内アパレル企業で唯一加盟し、また環境・社会貢献活動「マルイミライ」において製品リサイクルやいわゆるエシカル調達等に取り組んでいる。
国内約1,300店舗を展開するアダストリアも、エシカル調達、包装材の削減等に積極的に取り組んでいる。

SDGsは儲からない?

さて、日本の消費者は「義の会社だから、ユニクロやマルイで服を買おう」となるだろうか。現時点では、おそらくならない。

少し古いデータだが、2016年5月の「生活スタイル研究所」の4,000名を超える調査によると、「服を購入する際に重視するポイント」は、
1位:価格(73%)
2位:デザインやシルエット(61%)
3位:着心地の良さ(26%)
と続き、「企業のサステナビリティへの姿勢」「環境負荷」といったような項目は圏外のようである。私の肌感でも、そういった国内消費者は相当少ない。「義<利」が、現在の日本の消費者の多数派であろう。

また、丸井グループの2019年5月決算発表によると、増収増益ではあるものの、主な好調要因として「ショッピングクレジット、家賃保証サービスの拡大」を挙げており「サステナビリティ強化によって製品販売に好影響」との記載はない。つまり

SDGsへの取組が、いまのところ服の販売にほぼ繋がっていない

と読める。

ではなぜこれらのアパレル企業は、売上につながらないのにサステナビリティに取り組むのか。受託者責任に反しない(会社の経済価値を毀損した場合、株主から損害賠償される可能性がある)のか。

次回はこれについて考えてみたい。

 


大阪大学(理学部物理学科)卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナブル領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。再生可能エネルギー事業、環境技術の特許売買事業等をライフワークとして継続し、2社の事業売却を経験。京都大学ESG研究会講師(2020年度)。他のコラムはこちら。