ESG投資とは

SDGs同様に、最近よく聞くようになった「ESG投資」。

「ESG投資ってそもそも何?」

「今なぜESG投資なの?」

そんなあなたのために、本稿は書かれている。

 

まず、ESG投資の教科書的な説明はこうだ。

環境(E)・社会(S)・企業統治(G)に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のこと。 ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つ。

細やかな由来や成り立ちについては省くが、元々は欧州から始まったムーブメントで、欧州では投資全体の50%程度、世界全体では投資全体の30%程度(3,300兆円)がESG投資であるとされている。

一方、日本では2015年以前はさっぱりESG投資は行われておらず、2016年以降にあわてて始まり、2018年度では投資全体の18%程度がESG投資ということになっている。実際、国内大手の機関投資家や金融機関はESG投融資についてのリリースを2018年頃から次々に打ち出している。

 

なぜESG投資をやらないといけないのか?

このようなESG投資であるが、2019年12月時点の日本において、現場レベルでよく聞かれるのは以下のような声だ。

「本当にパフォーマンス(利益)出るの?」

「投資はパフォーマンスを追求するものなのに、環境や社会に配慮するのは意味がわからない」

「最大パフォーマンスを追求する受託者責任に反しないの?」

 

あなたはどう思うだろうか?
たしかに、ESG投資が求められているそもそもの経緯や背景を踏まえないと、直感的にこのように反応してしまうのも理解できる部分があるかもしれない。

そういった反応に対して、「気候変動を初めとした社会の持続可能性に対する危機に対し、機関投資家や金融機関は社会的責任を負っている(PRI、PRB)」等の説明をしても、これまたピンと来ないかもしれない。

 

そこで、私は別の角度から「今なぜESG投資か?」について説明したいと思う。

 

判断指標を増やしたほうが良い判断ができる

少し脱線してしまうが、「ある人物が、将来出世しそうか」を判断する場合、あなたはその人物のどこを見るだろうか。
仕事風景を見るか、それとも夜のお酒のシーンを見るか、はたまた自宅でくつろいでいる場面を見るか。より正確な判断をしたいのであれば、その全部を見てみたいのではないだろうか。
当たり前の話だが、一般的には

一つの面だけでなく、色んな面を見たほうがより正確な判断ができる。

換言すると、判断指標を増やしたほうが、結果として良い判断がしやすい。(増やしすぎると情報に振り回されてしまうのも人間の性ではあるが)

 

翻って、投資判断についてはどうだろうか。

従来型の投資は、主に「財務シグナル」を見て判断してきた。株式投資においては「有価証券報告書等の財務資料」ということになる。それらのシグナルから、過去・現在において稼ぎ出している経済価値を読み取り、未来に稼ぎ出すであろう経済価値を推測するのだ。

しかしここで、未来価値の「源泉」は何であろうか。特に近年はVUCA(先の見えない)の時代と言われる。たとえば「従業員をどれぐらい大切にしているか」「気候変動によって近未来に激変する社会に対してどの程度備えているか」等は財務資料には載っていないが、未来価値を構成する要素であるはずだ。

そういった未来価値の構成要素について記されていない財務情報だけを見て、未来価値を精緻に判断することはできるのだろうか。「一つの面だけでなく、色んな面を見たほうがより正確な判断ができる」のであれば、「非財務」情報も見ることでより良い判断ができるはずで、この

「非財務」領域を「環境価値・社会価値・ガバナンス価値」で表現したものが「ESG」情報

なのである。

 

ESG投資はVUCA時代の「マルチシグナルな投資」

財務情報、非財務情報を統合して判断する投資手法は「ESGインテグレーション」と呼ばれ、国内におけるESG投資の多く(全てではない)がこれだ。先の見えないVUCA時代において、観測シグナルを増やし多面的に判断することで少しでも判断を正確にするという意味で、ESG投資は

マルチシグナルな投資

とも言える。

余談であるが、最近よく聞かれる「SDGs経営」も同様で、財務シグナルだけでなく非財務シグナルを統合して経営判断する「マルチシグナルな経営」と考えれば腹落ちしやすいのではないだろうか。


大阪大学(理学部物理学科)卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナブル領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。再生可能エネルギー事業、環境技術の特許売買事業等をライフワークとして継続し、2社の事業売却を経験。京都大学ESG研究会講師(2020年度)。他のコラムはこちら。