サステナビリティ/SDGs/ESG/CSR関連の部署へ配属され、書籍やセミナー、研修等でサステナビリティについて勉強しているものの、

「なぜサステナビリティ/SDGsをやる必要があるのか、実はいまいち腹に落ちていない」

「だから100%の確信を持って経営層や他部署へ提言できない」

「他部署から、お前の部署はコストセンターだ、と言われても反論できない」

「モヤモヤしながら業務している」

という実務者(場合によっては経営者)の方たちへ。

このコラムは、あなたたちに新たな武器を提供するために書いている。

サステナビリティに関する一つの問い

いま、サステナビリティにまつわる壮大な内戦が、日本中の企業で起きている。それは、「短期の経済利益」と「中長期の環境社会利益」との争いであり、営業部(または経営陣)とCSR部との争いであり、短期株主と経営陣との争いでもある。相反するように見える利害を高次元で統合し、新しい企業の在り方を創生する。それが、あなたたちにしかできないことだと私は確信している。未来は、あなたたちの肩にかかっている。

このコラムでは「なぜ今、サステナビリティか」について複数回に分けて異なる側面から掘り下げていき、考えるきっかけを提供したいと思っている。そのために、本稿では、この問いを投げかけるところから始めてみたい。

「SDGsは背任罪や株主代表訴訟の対象になり得るか?」

ユニクロ(ファーストリテイリング社)の柳井会長は2019年10月決算説明会において「サステナブルであることはすべてに優先する」と宣言した。ファーストリテイリング社に限らず、あらゆる大手企業が業種問わず、サステナビリティへの取組を加速させ、SDGs、ESG、CSR等を目にする機会が急速に増えた。しかし、サステナビリティを敵視する人も存在することは否定できない。散見される主な意見として以下のようなものがある。

メーカー「資材を環境に配慮したものに変更すると仕入れコストが増え、利益が減る」

コンビニエンスストア「食品廃棄低減のため在庫圧縮すると機会損失が発生し、売上が減る」

事業会社「サステナビリティ推進部署に人的/資金リソースを投入する分、会社全体の利益が減る」

債権発行体「グリーンボンドは余分な発行コストがかかる」

サステナビリティにおける告訴/訴訟リスク

あくまでも思考実験として、サステナビリティに取り組む経営者/実務者には以下2つのリスクが付随すると考えてみよう。

1.背任告訴リスク

会社に与えた「財産上の損害」に対して、最大で10年以下の懲役/1,000万円以下の罰金

(会社法第960条/特別背任罪、刑法第247条/背任罪)

2.株主代表訴訟リスク

受託者責任に反し会社に与えた「損害」に応じて、この損害を回復する義務

(会社法第847条)

冒頭で挙げたような例は「サステナビリティ推進のために財産上の損害を会社に与えた」と解釈できないだろうか。裁判で争われた事例をいまだ聞いたことはないが、何人かの弁護士に聞いたところ、純粋な法解釈については意見が分かれた。

「時間軸」が第一のキー

1つ目のキーになるのは「時間軸」であろう。つまり「短期では損失につながるが、中長期では利益につながる」ため、「結局損害ではない」というのが直感的な回答であろう。しかし、「中長期では利益になる」ことの立証責任を仮に負わされた場合、立証できるだろうか。また、投資家のショートターミズム(短期思考)により、財務情報開示は3ヶ月(四半期)という短期目線になっている。更に、一般論として多くの企業において主要KPI(業績評価指標)は、日次や週次、せいぜい月次で管理されていることが多いはずだ。この時間感覚の違いはどのように埋まるだろうか。

なお、企業価値算出の代表的手法であるDCFは「将来キャッシュフロー」を足し合わせて現在価値に割り引くというものだが、一般的なケースで10年程度先の将来までのキャッシュフローを見ないと、計算式の都合上、精緻な算出はできない(実務上は予測5年+その後は”継続価値”算出)ので、意外と中長期で見ているとも言えるだろう。

「経営者/実務者は何に責任を負っているのか」が第二のキー

「経営責任(または受託者責任)」とは「◯◯を最大化すること」だとする。◯◯に入るのが、「株主利益」なのか「企業価値」なのか「ステークホルダー利益」なのか。ここが2つ目のキーであろう。上述した2つのリスクは、どちらも「会社に与えた損害」について責任を問われる可能性を問うている。教科書的な回答としては「P/L上の経済損失を与えたが、会社が属する地域社会には社会的利益を与えた」というものになると考えられるが。

「ステークホルダーとは誰だ?」

「SS(社会満足度)は経営KPIになり得るのか?」

「MDGsからSDGsへのアップデートによって、主体者に企業が含まれた」

この辺りが第二のキーについて考えるヒントになるであろう。

 

「SDGsは背任罪や株主代表訴訟の対象になり得るか?」

あなたの回答はどんなものだろうか。ぜひ聞かせてほしい。

私の回答はこうだ。

「なり得ない。なぜなら。。。」

なぜならに続く文脈については、次回以降で述べていく。


大阪大学(理学部物理学科)卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナブル領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。再生可能エネルギー事業、環境技術の特許売買事業等をライフワークとして継続し、2社の事業売却を経験。京都大学ESG研究会講師(2020年度)。他のコラムはこちら。