第3回 2019年6月19日(水)

CSR部員塾第15期上期の第3回が6月19日、東京・京橋のシティラボ東京で開かれた。10月に行われるCSR検定3級試験に向け、テキスト第3~4章のポイント解説を行ったほか、気候変動対策に向けた国際的な動きやSDGs「アウトサイド・イン」の思考法を解説。企業事例では、ファーストリテイリングの取り組みが紹介された。

◆3級教科書ポイント解説(3~4章)
森 摂(オルタナ編集長)

この日の冒頭ではこれまでの講義を振り返り、参加者が感想や意見を述べ合った。「部員塾でCSRの考え方の基礎を身に付けることで、各種の報告書やアンケート回答、社内での浸透に役立っている」「異業種の方との交流や事例が参考になる」などと手応えを語った。

オルタナ編集長の森は、近年企業とNGO/NPOが協働する動きが加速していると指摘。グローバルな動きとして、低炭素社会への移行を推進する企業やNGO、投資家などとの共同体である「We Mean Business」を紹介した。

企業を取り巻くステークホルダーとの協働を踏まえ、貧困をはじめ近年焦点となっている社会課題に対応していく必要性を強調した。一例として働き方の問題に触れ、「過労自殺などの悲劇をどのように防げばよいか。そうした問題意識を踏まえ、ワークライフバランスや職場環境の多様化といった様々な個別イシューに取り組んでいく必要がある」と述べた。

「新聞なども活用してまず最新の情報を取り込みそれを社内で共有し、その上で発信していく。CSR検定などをそのプロセスを促進するためのツールとして活用してほしい」(森)

 

◆CDP/SBT/TCFDなど新しい国際スタンダード
池原 庸介氏(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)気候変動・エネルギーグループ プロジェクトリーダー)

生物多様性や環境保全に取り組むWWFジャパンの池原氏は、温室効果ガスの排出削減について「長期の視点から国際的に数値目標を明確に定めたのは、2015年に採択されたパリ協定が初めて」と述べ、脱炭素に向けた企業の取り組みがかつてないほど加速していると指摘。それを後押ししているのが、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資だと説明した。

池原氏は投資家が重視している指標として、企業などの気候変動への対応と戦略を評価するCDPや、世界的なESG投資指標であるDJSI(Dow Jones Sustainability Index)を紹介し、こうした指標に対応していくことが重要だと述べた。

パリ協定の目標達成に向けた国際的な動きのなかで、「非国家アクターの重要性が高まっている」と池原氏は述べる。パリ協定が脱炭素に向けて強力なシグナルを発信し、NGO/NPO、市民社会などの動きを後押ししている状況があるという。

気候変動対策に向けた国際イニシアティブであるSBT(Science-based Targets)やTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)といった動きを踏まえ、「中長期的な視点から、こうした外部のイニシアティブなどを活用しながら、社内での浸透や社外への発信を進めていく点が重要だ」と池原氏は述べた。

 

◆ワークショップ:SDGsアウトサイド・インの思考法
森 摂(オルタナ編集長)

ワークショップの最後には各グループの代表がディスカッションの結果を発表し、会場で共有した

ワークショップでは5月に行われた第2回部員塾に引き続き、社会課題の解決を起点にしたビジネス創出であるSDGs「アウトサイド・イン」の考え方を自社の事業に活用するにはどうすべきかを議論した。「SDGsのゴールを知るだけでなく、自分の会社で何ができるか知ることが重要だ」(森)

SDGsの目標のなかから課題を選び、自社の持っている資源とその活用の仕方について、グループ内で意見を出し合った。具体的な事業化に向けたアウトサイド・インのビジネスアプローチについて、活発な議論が行われた。

オルタナ編集長の森は「新規事業の拡大という意味だけでなく、SDGsに取り組まないことによるリスクを認識し、それに対応していくことが求められている」と強調した。

中川千絵美さんによる「グラフィックレコーディング」(一部)

また横浜市立大学4年の中川千絵美さんによる「グラフィックレコーディング」により、ワークショップの様子をイラストを交えリアルタイムで記録・表現し、会場全体で共有した。

 

◆企業事例3: ファーストリテイリング
講師:シェルバ英子氏(株式会社ファーストリテイリング サステナビリティ部 サステナビリティマーケティングチームリーダー)

全商品リサイクルや難民キャンプでの衣料配布など、CSRに積極的な企業として知られるファーストリテイリング。同社のサステナビリティ部サステナビリティマーケティングチームリーダー・シェルバ英子氏は、「2013年ころから有害化学物質の使用や動物愛護など、社会からの要請が強くなり、本当の企業姿勢が問われるようになった時期だった」と振り返る。

当時、国際環境NGOグリーンピースが中国のアパレル工場での有害化学物質使用状況を公開した。これを受け、同社は2020年までに有害化学物質ゼロを宣言した。一方で、有害化学物質の撥水加工など消費者が求める機能もある。

シェルバ氏は「売れるものが作れないというジレンマもあり、商品部、生産部らと喧々囂々と話を進めている」とし、「それぞれの『正しさ』があるなかで透明性を持って説明することが一番大切だと気づいた」。

最近では「ウォーターカットデニム」の開発に成功。デニムは水を大量に使用して生産されるが、洗いの過程で90%以上の水使用量削減を実現した。2020年に年間4000万本の生産を目指す。