第1回 2019年4月17日(水)

CSR部員塾第15期上期が4月17日開講した。40人以上が参加し、初回は受講者の自己紹介から始まった。オルタナ代表取締役兼「オルタナ」編集長の森摂は、CSR部員塾について「自分たちで考え、発表するプロセスを大事にしている。まわりはどう考えているか、共有し合うことで理解が深まる」と説明する。

◆CSR/SDGs/ESGの基本的な理解
森 摂(株式会社オルタナ代表取締役オルタナ編集長)

森 摂(株式会社オルタナ代表取締役オルタナ編集長)

企業の目的とは何か。利益を出すことなのだろか。オルタナの森は「利益は結果であって目的ではない」とする。ピーター・ドラッカーの言葉を引用し、「信頼され続けるために、経済的な目的と社会的な目的を同軸でとらえることが重要だ」と話す。

信頼度調査「2019 エデルマン・トラストバロメーター」によると、グローバル企業を信頼する要因として、「製品・サービスの質」(48%)の次に社会貢献活動(16%)が続いた。さらに社会問題に取り組んでいる企業の社員は、取り組んでいない企業よりも、企業へのエンゲージメントが圧倒的に高いことが分かった。

こうしたことから森は「社会に対応することそのものが企業価値の向上、ひいては顧客創造につながる」と強調する。「財務の答えは一つだが、非財務は正解が一つではない。だからこそサステナビリティは難しい」とし、そのうえで、社会との対話の重要性を説いた。

◆社会から見た企業の役割/SDGs概論
黒田かをり(一般財団法人CSOネットワーク 共同事業責任者/株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

黒田かをり氏(一般財団法人CSOネットワーク 共同事業責任者/株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

黒田氏は、講義の冒頭で「私たちの住む世界」はどのような状態かを紹介した。地球の限界を超えた生産・消費活動、自然資本の減少、増加し続ける人口、頻発する自然災害、飢餓人口の再上昇、大量なフード(食品)ロス――。国内外の課題は多い。そうしたなかで、2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が生まれた。

SDGsの精神は「誰一人取り残さない」だ。黒田氏は「『誰一人取り残さない』とは、社会的に弱い立場に立たされた人を常に第一優先にすること。こうした人の能力強化が重要だ。ほとんどの国で所得格差は拡大している。経済格差と教育格差は密接につながっている。ジェンダーや民族、貧困など教育における格差は、世界だけではなく日本にもある」と説明する。

さらに「SDGsは大きなビジネス機会である」とする一方で、「ビジネス機会になるかどうかだけではなく、『環境』『人権』『労働』『腐敗防止』といった責任ある倫理的な企業行動が求められていることを忘れてはいけない。特にSDGsと人権尊重の意識を持ってほしい」と強調した。

◆ワークショップ「未理解点の洗い出し」
森 摂(株式会社オルタナ代表取締役オルタナ編集長)

ワークショップの様子

第3限目は、ワークショップ形式でSDGsやアウトサイド・インアプローチに関してさらに理解を深めたい点を話し合った。会場から出た質問と森代表の回答の一部を紹介する。

Q:「NGOやNPOと関係をつくるポイントとは何か。広報を担当しており、急に厳しい質問に社内が慌てるという印象もある」
A:厳しい質問が来た時に、返事をせず「貝」になってしまう企業がある。厳しい質問が来ても、まずは対話をすることが重要。ネスレやユニリーバなど、社会からの厳しい批判に逃げずに向き合うことで、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)などの取り組みに繋がっている。

Q:「SDGコンパスの中身はどういったものか。また、アウトサイドインアプローチの事例を知りたい」
A:SDGコンパスは、SDGsのビジネス指南書といわれている。SDGsの経営への統合で重要なのは、「バリューチェーンマッピング」と「アウトサイドイン」の2点。最近のアウトサイドインアプローチの一例としては、アディダスがNGOと協働し、海洋プラスチックゴミを回収してシューズを開発するといった試みがある。

当日の議論の内容を、イラストを交え「グラフィックレコーディング」で共有した

当日は横浜市立大学4年の中川千絵美さんが、ワークショップの様子をイラストを交えリアルタイムで記録・表現する「グラフィックレコーディング」を行い、会場全体で共有した。

◆企業事例1:ブリヂストン
佐々木恭子(株式会社ブリヂストン CSR・環境戦略企画推進部サステナビリティコミュニケーション戦略企画ユニットリーダー)

佐々木恭子氏(株式会社ブリヂストン CSR・環境戦略企画推進部サステナビリティコミュニケーション戦略企画ユニットリーダー)

佐々木氏は冒頭で、「会社をサステナブルな形で運営するためには、社内浸透が十分でなければ、企業の大きな力にはならない」と指摘した。

ブリヂストンは、売り上げの海外比率が8割を超えている。そうしたなかで、グローバルCSRコミットメントである「Our Way to Serve」を定め、2017年から4年かけて国内外での浸透を進めている。現在取り組みは3年目だ。

「最高の品質で社会に貢献」という使命を掲げ、「モビリティ」「一人ひとりの生活」「環境」という重点領域を設定。同社の強みとして「多様なメンバー」「グローバルなネットワーク」「業界でのリーダーシップ」をあげ、ソリューションとエンゲージメントを進めていくという体系となっている。

「一人ひとりは会社員であると同時に個人でもあるということを見落としがち。(一人ひとりが)社会貢献のマインドを持つことによって、『Our Way to Serve』を通じて企業文化自体を変えていくことにつながるのではないか」と佐々木氏は述べた。