CSR検定2級公式テキスト[はじめに:CSRのWhy,What,Howを知る]から引用

〔CSRの定義〕
ISO26000による「社会的責任」の定義 (2章 用語および定義2.18)
組織の決定及び活動1が社会及び環境に及ぼす影響※に対して、次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任。
 ― 健康及び社会の繁栄を含む持続可能な発展に貢献する。
 ― ステークホルダーの期待に配慮する。
 ― 関連法令を順守し、国際行動規範と整合している。
 ― その組織全体に統合され、その組織の関係2の中で実践される。

注1:「活動」には、製品・サービスおよびプロセスを含む。
注2:「関係」とは、組織の影響力の範囲内の活動を指す。
(※)最近では、「影響」を英語原文に従い、「インパクト」とすることが増えている。(編集者注釈)
(出典)「ISO26000:2010 Guidance on social responsibility」を基に作成

〔CSRの目的〕
この組織の社会的責任の定義は、企業に特化して言えば(以下同様)、CSRの根本的かつ包括的な概念が凝縮されている。ISO26000(3.3.1)の「社会的責任の特徴、一般」では、CSRの本質的な特徴として、次のように説明している。
すなわち、企業が社会および環境に対する配慮を自らの意思決定に組み込み、自らの意思決定と事業活動が社会および環境に及ぼす影響(インパクト)に対して説明責任を負うことである。企業がマイナスのインパクトを最小化し、プラスのインパクトを最大化することは、地球社会の「持続可能な発展」に寄与する。それゆえ、広く国際的なCSRイニシアティブに採用されている。

また、ISO26000(3.3.5)の「社会的責任と持続可能な発展との関係」では、社会全体と地球環境の持続可能性の実現をめざす「持続可能な発展」には、経済、社会、環境という三つの側面があり、これらは相互に依存しているため、CSRは「持続可能な発展」と密接に結びついている、と述べている。したがって、CSRの包括的な目的は、「持続可能な発展」に最大限に貢献することである。

これは同時に、個別企業の観点からみれば、今後の経営環境の地球規模の大きな構造的変化の中で、自らの持続可能性や継続的な存続可能性を追求すべきことを意味する。すなわち、社会や環境のサステナビリティへの貢献は企業経営そのものである。

〔CSRの原則〕
上述のCSRの定義とは別に、ISO26000の4章では「CSRの原則」を明示している。すなわち、以下の7原則である。

〇説明責任:企業は、自らが社会、経済、環境に与える影響(インパクト)に説明責任を負うべきである。(インパクトにはプラスとマイナスの両面があることを認識する)
〇透明性:企業は、社会と環境にインパクトを与える自らの意思決定と事業活動に関して、透明であるべきである。(既知と起こりえるステークホルダーへのインパクトの情報開示)
〇倫理的な行動:企業は、倫理的に行動すべきである。(正直、公平、誠実という価値観)
〇ステークホルダーの利害の尊重:企業は、自らのステークホルダーの利害を尊重し、よく考慮し、対応すべきである。(まず、自らのステークホルダーを特定する)
〇法の支配の尊重:企業は、法の支配を尊重することが義務であると認めるべきである。(全ての関連法令と規則に従う。つまり狭義の法令順守=ハードロー順守)
〇国際行動規範の尊重:企業は、法の支配を尊重すると同時に、国際行動規範も尊重すべきである。(適切な法的保護手段がない国の場合、国際行動規範に従う。つまりソフトロー順守)
〇人権の尊重:企業は、その意思決定と事業活動において人権を尊重し、その重要性と普遍性の両方を認識すべきである。(国際人権章典に規定される権利を尊重する)

〔CSRの中核主題と実践すべき課題〕
上述の定義と原則に基づき、企業が自らのCSRの範囲を定義し、実践すべき課題を特定し、その優先順位を設定するために、ISO26000の6章では「CSRの中核主題」、つまりCSRの取り組み領域を7つ明示した。具体的には以下のとおりであり、相互に依存関係があるため、全体と部分を視野に入れ配慮するホリスティックなアプローチが必要である。

〇コーポレートガバナンス:企業が組織目的を追求する上で、決定を下し、実施する時の仕組み、つまり最も重要なプロセスと構造であり、CSRでも中核として組織能力を高める。
〇人権:企業が人権を認識し尊重することは、法の支配、社会的な正義と公正の概念に不可欠であり、影響力の範囲内で責任を負う。人権侵害の発見・防止・軽減プロセスが必要。
〇労働慣行:企業による雇用創出と賃金・報酬は、最も重要な経済的・社会的貢献である。労働条件と就業環境の質向上は、労働者とその家族の生活の質に大きく影響を及ぼす。
〇環境:環境の持続可能性は、人類の存続と繁栄の前提条件である。企業の意思決定と事業活動は場所を問わず環境に影響を与える。環境責任は、CSRの重要側面である。
〇事業慣行:企業が他の組織(企業)と取引を行うに際しては、常に倫理的な行動が求められる。汚職防止、公正な競争、財産権の尊重、調達時のCSR配慮などが必要である。
〇消費者課題:企業は弱いまたは不利な立場にいる消費者に対して、公正なマーケティング、安全衛生の確保、苦情・紛争解決、持続可能な消費、プライバシー保護などの責任がある。
〇コミュニティへの参画とコミュニティの発展:企業は、自らの活動拠点がある地域コミュニティへの発展への貢献を目的として、コミュニティへの参画を図るべきである。

上述の7中核主題にはそれぞれ具体的な実践すべき「課題」(計36)が提示され、さらに各課題には合わせて360を超す「関連する行動および期待」が例示されている。是非、自社のCSRを考える時に参考にしていただきたい。

なお、これらの中核主題や課題は、企業が対処すべき起こりそうな経済的、環境的、社会的な影響(インパクト)が取り上げられている。それゆえ、企業が自らのCSR課題を特定する際に考慮すべき課題ではあるが、すべての課題があらゆる企業に関係するわけではないことに留意するべきである。

〔CSRの実践のための概念や発想〕
上述のCSRの定義や原則ならびに中核主題や課題を実践に移す際に、CSR特有のとても重要な概念や発想がいくつかあるので、以下に列挙する。いずれも相互に関連するが、詳細はそれぞれ本文の該当箇所(本書第3~4章)で説明する。

 ステークホルダーエンゲージメント
👉自社事業のステークホルダーの特定とその期待・価値の認識と対応
 「加担」の回避
👉法的な意味では、違法行為と知りながら実行に影響を及ぼす行為ないし不作為
👉法的でない意味では、国際行動規範と整合しない行為について、ネガティブ
インパクトを知っていた場合には、「加担」とみなされる。
👉関係者の不法行為に沈黙した場合、不法行為から利益を得た場合も同様である。
 デューデリジェンス
👉自社事業によるネガティブインパクトの発見、対処、防止
👉環境の場合は、「環境デューデリジェンス」と言い、環境方針が不可欠
👉人権の場合は、「人権デューデリジェンス」と言い、人権方針が不可欠
 影響力の範囲(バウンダリー問題)
👉自社事業を超えるサプライチェーンないしバリューチェーンを意識する。
 関連性・重要性・優先性と判断基準の設定
👉社会課題と自社事業の関係から考える自社のCSR課題の特定プロセス

[注]詳細は、日本規格協会編『ISO26000:2010 社会的責任に関する手引』を参照されたい。