サステナビリティ革命(その1)
~人類の意思としての「サステナビリティ革命」~

■人類革命⇨農業革命⇨精神革命
太陽系にある地球は46億年前に誕生し、長い地質時代を経て、やがて地球上に生命体が誕生した。そして、約700万年前には直立二足歩行の猿人が出現し(人類革命)、石器と火の使用という技術革新を経て、さらに約15~20万年にホモサピエンス(現生人類)が出現した。ここから人類文明が始まったのである(図表1参照)。

時代は下って、約1万5000年前から1万年前にかけて、人類は新石器時代の狩猟・採取社会からの農耕・家畜社会へと変革した。これは、文明史上の「農業革命」と呼ばれる。背景には、鉄の精錬(製鉄)の普及がある。つまり、新たな技術革新によって農具や武器が量産されるようになり、農作物の生産量増大とともに富の蓄積が進み、文明発祥の地では王がより強力な武力を保持するようになったのである。

他方、これら先進地帯においては社会が複雑化・多様化したため、思想体系の確立も進み、紀元前500年ごろに世界同時の思想的大変革が起きた。これは「精神革命」(哲学史的には「枢軸時代」)と呼ばれる。例えば、ユダヤ教、儒教、仏教などの宗教が創始され、プラトンのイデア論もこの頃に提唱された。

■現代文明につながる「産業革命」
このように文明史上にはいくつかの「革命」があるが、最も有名なものは18世紀後半の「産業革命」であろう。この「産業革命」は「工業革命」ともいわれるが、現代文明につながるものである。「産業革命」は1760年代から1830年代に及ぶ産業的・社会的な変化ではあるが、工業化と都市化が急速に進んだために、社会経済の様相は大きく変化した。

その発端は蒸気機関の開発と、そのための動力源の刷新である。つまり、かつて主たる動力源は人・馬・水・風であったが、それが石炭に置き換わったのである。これは一つの「エネルギー革命」であった。この蒸気機関という技術革新により、当時の主力産業であった綿織物生産の機械化が進み、熟練工の失業と言う社会問題も発生した。

さらに、高炉におけるコークスの利用による製鉄業も発達したことで、石炭産業が確立し、現代に続いている。また、蒸気機関と石炭産業の発達により、蒸気船と蒸気機関車が交通手段として確立したため、船運と鉄道が急速に普及した。これは「交通革命」としての側面をもつ。これらのことが相まって、上述のように産業の変革と共に社会経済の姿が激変したのである。

■「産業革命」から「サステナビリティ革命」へ
その後時代を経て、19世紀中葉の1859年には、米国のドレーク油田で世界初の機械堀りによる石油生産に成功した。これによって石油産業が確立した。さらに20世紀初頭に米国で石油を原料とする有機合成ポリマーの製造が開始され、プラスチック産業が誕生した。第二次世界大戦後には多様なプラスチック製品が開発され、石油化学工業の興隆期を迎えた。

日本では戦後の復興期を経て、電力として石炭火力から石油火力への転換が進み、水力発電は次第にその地位を下げていった。一方で、IGCCなどの高効率石炭火力発電への研究開発が進められ、国内では約30年後の2013年に商業運転が開始された。同時に海外への輸出も始まった。なお、米国では1951年に世界初の原子力発電に成功し、2013年にはシェールガス革命が起きた。

しかし、この時代の流れのなかで、21世紀初頭の2015年には「サステナビリティ革命」が世界同時多発的に始まった。つまり、石炭利用に始まる18世紀後半の産業革命以降の工業化文明が、不幸にも地球環境を破壊し始めたことに対する、人類のサステナビリティのため大変革の開始である。

これまでの文明史上の革命は、自然発生的な技術革新が結果的に引き起こした革命であったが、このサステナビリティ革命は人類の意思として初の大革命である。詳細は次回にて述べたい。

図表1:2015年は文明史上の「サステナビリティ革命元年」(川村作成)


(つづく)

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』『統合思考とESG投資』など