人類が出せるCO2は1兆トン㉒
SDGsへのコミットメントとは何か(その10)
~「SDGsウォッシュ」と言われないために~

SDGs※が2015年9月に国連で採択されてから3年が経った。この間、日本企業は勉強期間を終えて、実装段階に入ってきている。現在、どこまで進んでいるのだろうか。

実態は、「SDGsウォッシュ」が少なくないと言わざるを得ない。SDGsの狙いや本質を理解しない、安易な上滑りの「SDGsブーム」は避けねばならない。

※正式には、「私たちの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」

【「SDGs進捗度」計測の提案】
日本企業の多くは、すでに2018年版の「CSR・サステナビリティレポート」あるいは「統合報告書(アニュアルレポート)」を発行し終えている。今年の報告書に共通する特徴はSDGsへの言及であろう。

しかし実感として言えば、「SDGsウォッシュ」と言わざるをえない報告書が目につく。つまり、既存のCSR体系や事業活動にSDGsの17目標(アイコン)を単に紐付けただけ、としか思えない報告書が多いのである。読者もSDGsの勉強を終え、眼が肥えてきている。侮ってはならない。

本SDGsコラムシリーズの第一回「17の目標を見て、SDGsを分かった気になっていないか?」(本年2月)で、「SDGコンパス」による「5ステップ」を紹介した。そこでは概要しか載せなかったが、より具体的に説明すると下表のようになる。

「SDGコンパス」は企業向けの「SDGs導入指南書」である。その導入ステップに従えば、一部のグッド・プラクティス企業を除いて、多くの日本企業は「ステップ1」を脱して「ステップ2」に差し掛かった段階と考えられる。自社を客観的に見た場合、いかがであろうか?

そこで、この5段階ステップを計測尺度として、自社の「SDGs進捗度」を客観的に判断し、公表することを提案したい。言うまでもなく、自社ウェブや来年度の報告書において。そうでなければ、時間のムダでありミスリードとなろう。そして、「SDGsウォッシュ」と言われるようになる。

【「SDGsウォッシュ」対策】
環境の「グリーンウオッシュ」と同様に、「SDGsウォッシュ」も実態が伴っていないのに、上辺だけSDGsへ対応しているように見せかけていることを指す。そこで今回は「SDGsウォッシュ」対策として、2つの資料で指摘されているポイントを再確認したい。

(1)ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2018年3月)拙稿
「SDGsウォッシュ」と言われないために
~「SDGsの実装化」に向かう日本企業のグッド・プラクティス~
http://www.nli-research.co.jp/files/topics/58223_ext_18_0.pdf

・SDGsの企業向けの導入指南書である「SDGコンパス」の要点を踏まえ、優良事例を示しながら企業が今後取るべき考え方や手法について解説したレポートである。

・事業とSDGsの紐づけ自体は非難すべきことではないが、単に紐付けただけで、これ以上何をすれば良いのかと戸惑っているようでは、「SDGsウォッシュ」と指摘されかねない。

・SDGsに取り組むということは、17目標の達成(アウトカム)に向けた「手段」ないし「アウトプット」である169のターゲットレベルで貢献することであり、その貢献度測定の指標や方法もあわせた情報開示が期待される。目標設定の意欲度も問われる。

・「SDGコンパス」を活用して、自社事業の環境・社会へのインパクトを分析するバリューチェーン・マッピングなどを行い、SDGs達成への貢献を経営に統合することが効果的である。

(2)電通(2018年6月)
「SDGsコミュニケーションガイド』
http://www.dentsu.co.jp/csr/team_sdgs/pdf/sdgs_communication_guide.pdf

・企業経営者や広告宣伝担当者、広告会社向けに、SDGsに関するコミュニケーションのための「手引き」として公表された(「DENTSUグリーンウォッシュガイド」2010年公表に続くもの)。

・「SDGsウォッシュではないのか?」と指摘されてしまうと、生活者や消費者との信頼関係(ブランド)を損なったり、資金提供者の投融資先としての魅力を毀損する可能性がある。

・「SDGsウォッシュ」の明確な判断基準は無いため、国や地域、価値観や宗教、社会の風潮などによって異なり、各人の主観に負うところも多い。

・「SDGsウォッシュ」を回避するための原則を提示するので、それらを踏まえた宣伝広告を含むコミュニケーションが求められる。

①根拠がない、情報源が不明な表現を避ける

②事実よりも誇張した表現を避ける

③言葉の意味が規定しにくい曖昧な表現を避ける

④事実と関係性の低いビジュアルを用いない

(筆者注)
SDGsについては今回をもって終了し、次回からは「サステナビリティ革命」を掲載します。

(つづく)

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』『統合思考とESG投資』など