人類が出せるCO2は1兆トン㉑
SDGsへのコミットメントとは何か(その9)
~世界初の企業版「SDGsレポート」を日立が発行~

「SDGs達成への貢献」に向けたグッド・プラクティスの一つとして、本稿では日本初(おそらく世界初)となる日立製作所のSDGsに特化した、企業版「SDGsレポート」を紹介する。

【SDGsレポートの狙い】
今年4月、株式会社日立製作所(以下、日立)は、日立とSDGsのかかわりをまとめた「日立SDGsレポート -2030年に向けた日立のサステナビリティへの取り組み-」を発行した。同レポートでは、日立が企業活動を通じてどのようにSDGsの達成に貢献するかを明らかにしている。
http://www.hitachi.co.jp/sustainability/sdgs/pdf/HitachiSDGsReport_j.pdf

ただし、SDGsレポートという体裁をとってはいるが、このレポートは、『日立のサステナビリティ戦略』をSDGsのフレームワークで解説したものと考えることができる。つまり、「SDGsありき」ではないと言うことができる。ましてや、単にSDGsとの紐付けを狙ったものでもない。

「日立の経営戦略とSDGs」(2頁)では、まず、「SDGsは単なる期待目標ではなく・・・人類と地球の繁栄の実現をめざす具体的な行動計画」とSDGsの位置づけを明確にしたうえで、「SDGs達成とより良い世界の構築に向けて、企業が長期的視点に立った枠組みを策定し、積極的にサステナビリティを推進することが期待されている」と認識する。

そもそも、冒頭の「経営者メッセージ」(1頁)で、東原敏昭CEOは「日立の考えるサステナビリティとは何か」を明確にしている。それは、以下の3点である。
① 革新的なソリューションを社会に提供し、パートナーやステークホルダーとの協創を推進する。
② 同時に人々や地球環境に与えるネガティブインパクトを軽減し、緩和するために責任ある企業活動を行う。
③ SDGsなどの国際的な目標達成に積極的に貢献する。

ちなみに、この考え方は、筆者の提唱する長期的視点の「CSR/CSV」概念と基本的に同じである。

それから、レポートの日本語版と英語版は同時に公表されたが、実は先に英語版が完成し、その後日本語訳ができたという。しかも、その英語版は日立ヨーロッパ社(ドイツ)に世界のCSR担当者が集まって完成させたものである。これは、まさにグローバル企業としての行動パターンであろう。

【SDGsレポートの構成】
具体的なSDGsへの対応については、東原敏昭CEOを議長とする「サステナビリティ戦略会議」において検討された。その結果、「企業活動全体で貢献する目標」と「事業戦略で貢献する目標」に分けて目標を設定している(下図参照)。

(資料)「日立SDGsレポート2018」2ページ

前者については、企業活動全体で貢献すべき目標を6つ特定している。これらの目標は日立の事業・経営戦略全てに関係しており、企業として長期的なサステナビリティに影響を与えると考えている。特に、この枠は事業戦略の目標群を包含していることに留意すべきであろう。

後者については、SDGsの17目標と169のターゲットのそれぞれにかかわるリスクと機会について検討し、日立の事業戦略を通じて貢献できる目標を5つ特定している。

具体的には「社会イノベーション事業」を通じて持続可能な社会を実現するべく、「電力・エネルギー」「産業・流通・水」「アーバン」「金融・社会・ヘルスケア」の4分野に注力して事業展開していることから、実際にはこれらとの関係で報告されている。

紙面構成で特徴的なことは、4つの注力事業分野の各産業における社会的課題の観点から「世界で起きていること」、「2030年の市場規模(予測)」や「日立が目指す姿」を明確にして、「具体的な取り組み」などの情報が整理されている。これはバックキャストとフォアキャストが融合した戦略・戦術策定と言えるだろう。

(つづく)

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』など