人類が出せるCO2は1兆トン ⑳
SDGsへのコミットメントとは何か(その8)
~「SDG Industry Matrix」をご存知ですか?~

「SDGs達成への貢献」に向けたグッド・プラクティス紹介の一環として、本稿では「SDG Industry Matrix ~産業別SDG手引き~」から着眼点や先進事例を紹介する。

【SDGs三部作】
一口にSDGsと言っても、三種のイニシアチブが公表されている、と今年2月の本コラム(その1)で述べた。それぞれの要点を再確認すると、以下の通りである。

(1)「持続可能な開発のための2030アジェンダ」:2015年国連総会にて採択
◆構成:前文+宣言+「SDGs(17ゴールと169ターゲット)」

◆SDGsの位置付け:人間、地球、繁栄と平和のための目標群と行動計画
・2030年までにグローバルレベルの社会的課題の解決を目指す
・すべての人々の人権を実現し、「誰一人取り残さない」
・持続可能な開発の三側面(経済・社会・環境)の調和

(筆者注)
SDGsのカラフルなアイコンで示される『ゴール』は、到達すべき望ましい状態を表した「アウトカム」である。これに対し、「ターゲット」はそれを実現するための具体的な取り組み内容と到達点を表す「アウトプット」と理解することができる。したがって、ターゲットレベルでの検討が不可欠である。

(2)「SDG Compass」:SDGsの企業行動指針
◆基本認識:人類は、経済・社会・環境で大きな課題に直面している。
・SDGsは2030年の達成に向けた「世界の優先課題とあるべき姿」を明示したもの。

(筆者注)
SDGsは持続可能な地球を実現するための「目指すべきゴール」を明確にしたものであり、日本企業の誤解しやすい実現可能性の積み上げによる「必達目標」(できないことは実行しない)ではない。
企業にはSDGsの達成に向けた努力と貢献に期待し、そのコミットを求める。

◆目的:企業がSDGsをどう活用するかについての指南書(SDGs導入の5ステップ)
 ①SDGsの理解、②事業の影響評価、③戦略的優先課題の決定、④目標設定、⑤報告

◆SDGs導入に当たっての新しい手法(発想)
 ①SDGsのバリューチェーン・マッピング
 (自社事業によるプラス・マイナスの影響をバリューチェーン全体で考える)
 ②アウトアイド・イン・アプローチ
 (社会的課題から自社事業の在り方を考え、目標を設定する)

(3)「SDG Industry Matrix」:業種別SDG手引き
◆目的:企業のSDGsへの関心を戦略的な事業に転換する手引書
・Shared Value Creation(共有価値の創出)の視点から、社会的・環境的課題に関するビジネスチャンスのヒントを提供
・これは今後の市場潜在性、社会的要請、政策の連携を示唆

◆特徴:業種別に17のSDGごとに業種特性に応じた事業の着眼点と多様な実例を示す。
取り上げた業種:一般製造業、食品・日用品、金融サービス、エネルギー・地下資源・化学工業、医療、運輸、気候変動(抜粋再掲)

◆製造業全般の着眼点
持続可能な生産と製品、低コスト製品、脱炭素エネルギー、持続可能なサプライチェーン、医療・健康への技術の応用など

【SDG Industry Matrixには何が書いてあるのか?】
SDG Industry Matrixには、業種別の期待される事業機会とともに世界の先進的な事業事例が多数例示されている。ここでは化学工業版に記載されている取り組みの一部を抜粋列挙するが、示唆に富む取り組みが多い。

図表1:SDG Industry Matrixの期待する「事業機会」
(資料)「SDG Industry Matrix」を基に筆者作成

図表2:SDG Industry Matrixに記載された「先進的な事業事例」(化学工業)
(資料)「SDG Industry Matrix」を基に筆者作成

次回は、日本初となる日立製作所作成の「日立SDGsレポート」を紹介する。

(つづく)

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

川村雅彦(オルタナ総研所・首席研究員)

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』など