人類が出せるCO2は1兆トン ⑲
SDGsへのコミットメントとは何か(その7)
~SDGsと本業の統合~

今回は、SDGsと中核事業の統合に関するグッド・プラクティスを2件紹介する。一つは2ドルトイレを開発したLIXILグループ、もう一つは新グローバルCSR体系を制定したブリヂストンである。

【LIXILグループ】

◆コーポレート・レスポンシビリティ(CR)戦略とSDGs
LIXILグループは「CR戦略」にのっとり、世界中で革新的かつ責任ある活動を通して生活の質向上に貢献することで、最も信頼される企業となることを目指す。
そのため4テクノロジー事業(Water、Housing、Building、Kitchen)の強味を活かし、事業展開地域との関連性や緊急性が高い世界の課題の中から「3分野」に焦点を当てる。

(1)グローバルな衛生課題の解決
2020年までに1億人の衛生環境を改善することを目標に掲げ、途上国の衛生問題解決に向けた「トイレ」の普及に努める。
(2)水の保全と環境保護
2016年に「環境ビジョン2030」を策定し、2030年までに製品・サービスによる環境貢献が事業活動による環境負荷を超える「環境負荷ネットゼロ」を目指す。
(3)多様性の尊重
製品やサービスなどを通じて、高齢者や身体障がい者の生活の質の向上に貢献し、社内では多様な従業員の英知や視点を活かし、成長とイノベーションの原動力とする。

LIXILグループでの考え方をCR戦略に反映しており、経営判断する際の大きな指針としている。特に自社の強みを活かして、SDGs(目標6)「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」に積極的に取り組んでいる。

LIXILグループではSDGsの考え方をCR戦略に反映しており、経営判断する際の大きな指針としている。特に自社の強みを活かして、SDGs(目標6)「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」に積極的に取り組んでいる。
『LIXILグループ コーポレート・レスポンシビリティ報告 2017』

◆2ドルトイレのSATOビジネス

「安全で衛生的なトイレを利用できない人24億人」「屋外排泄を余儀なくされている人9億5000万人」 このように途上国の衛生環境は厳しく、「下痢性疾患で命を落とす5歳未満の子どもは毎日800人」と推計される(注)。(注:『LIXILのCR戦略「世界の衛生環境の改善」と SDGsの社内外浸透』より)

そこで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの援助を受け開発した、節水型簡易式トイレ「SATO(Safe Toilet)」の普及に尽力している。このトイレの特徴は、洗浄に必要な水もごくわずかで、子どもでも安全に使用できるように設計されていること。
2013年に初めてバングラデシュで発売され、現在では世界14か国以上で100万台超が使用されている。その後途上国での現地生産で低価格を実現し、現地の雇用創出にも寄与している。

『世界の衛生問題―「トイレ」が未来を変える』
http://www.lixil.com/jp/stories/stories_02/
http://www.sato.lixil.com/

【ブリヂストン】

◆グローバルCSR体系「Our Way to Serve」の制定
ブリヂストングループは、2017年3月にグローバルCSR体系「Our Way to Serve」を新たに制定した。これは経営改革の一環であり、基本軸である企業理念体系が整った。
その実現に向け、顧客と社会との「共通価値」の創造による「ソリューション・プロバイダー」を目指すとともに、持続可能な社会の構築に向けた取組を行う。
このCSR体系では「重点領域」と「基盤領域」を明確にした。その背景には世界的な社会的課題の認識がある。つまり、人口動態の変化、急速な都市化、モビリティの進化、ダイバーシティとインクルージョン、ビジネスと人権、生活の質、生物多様性の喪失、資源枯渇、気候変動、責任あるサプライチェーン。

【重点領域】イノベーションと先進技術による「共通価値」の創出
・モビリティ:〔多様な移動ニーズに応える〕〔モビリティの進化に貢献する〕〔安全・安心な移動を支える〕
・一人ひとりの生活:〔安全・安心な暮らしを支える〕〔次世代の学びを支える〕〔地域の健やかな暮らしを支える〕
・環境:〔自然と共生する〕〔資源を大切に使う〕〔CO2を減らす〕

【基盤領域】ISO26000に準じ、責任ある企業として欠かせない取組
〔コンプライアンス・公正な競争〕〔BCP・リスクマネジメント〕〔人権・労働慣行〕〔労働安全・衛生〕〔調達〕〔品質〕〔顧客価値〕

◆SDGsターゲットで考える社会的課題のソリューション
重点領域の実践においては、まず特定した社会的課題と該当する「SDGsターゲット」を明確にしたうえで、それぞれについて自社のアプローチの基本方針とその具体的な方策を策定する。以下、実際のケースを例示する。

〔ケース1〕モビリティに関する社会的課題の深刻化(SDGs 8.2、11.2)
⇒デジタルツールを活用し、顧客と社会の共通価値を創出
〔ケース2〕公共交通の必要性とバス乗降時のバリアフリー化(SDGs 9.1、11.2)
⇒バリアフリー化に貢献するタイヤと縁石の開発
〔ケース3〕150か国以上で事業展開、地域社会の学びを支える(SDGs 1.1、4.4、8.6)
⇒固有課題の解決に、教育・訓練の提供による技能・知識の向上支援
〔ケース4〕身体障がいや加齢に伴う機能低下による移動制限(SDGs 3、8.5、10.2)
⇒活き活きした生涯生活を支援する技術・製品の開発・

なお、2102年に策定された「環境長期目標(2050年以降)」では、3項目が明記されている(重点領域の「環境」に対応する)。
・生物多様性の損失⇒「生物多様性ノーネットロス(貢献量>影響)」
・資源枯渇⇒「100%サステナブルマテリアル化」
・地球温暖化⇒「CO2排出量50%以上削減」

「BRIDGESTONE サステナビリティレポート2017-2018」

(つづく)

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

川村雅彦(オルタナ総研所・首席研究員)

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』など