人類が出せるCO2は1兆トン 
⑯ SDGsへのコミットメントとは何か (その6)
~169ターゲットレベルでの自社事業との関連付け~

前々回から「SDGs達成への貢献」に向けた日本企業のグッド・プラクティスを紹介しており、本稿では前回の「バリューチェーン・マッピング」と関係する「ターゲットレベルでの自社事業との関連付け」を取り上げる。

【SDGsの169ターゲットレベルでの関連付け】
前回、SDGsへの取組の中で最も大事なことは、17目標(正確には169ターゲット)の中から自社のバリューチェーンにおいて自社が取り組むべき優先課題(マテリアリティ)を決定することである、と述べた。

なぜならば、自社事業やプロダクトの環境・社会へのプラス・マイナスのインパクト(影響)をバリューチェーン上でSDGsマッピングすることにより、どこにどのような取組を集中させるべきかを知ることができるからである。

ここで忘れてはならないことは、このマッピングではSDGsとの関連性を169のターゲットレベルでの自己分析が不可欠となることである。そうでなければ、結局、深堀り出来ずに上滑りして、自社の本来のリスクとチャンスにたどり着けない。

 図表1は自社事業との関連性チェックをSDGsの目標2を例示として示したものである。このようにすることで、アイコンの「飢餓」だけでは分からないSDGsが実現しようとする具体的内容を確認できると同時に、自社バリューチェーンのどの段階と関連性があるのかを客観的に自己評価できるのである。

図表1:SDGsの「169ターゲット」での自社事業との関連性チェック表(例示) (資料)「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」を基に筆者作成

【169ターゲットレベルでの関連付けの先進事例】
SDGs達成への貢献が大きく期待できる領域については、経営計画やCSR体系などにおいても整合性を検証する必要がある。その準備として、ターゲットレベルでの関連性を丁寧に開示する事例を2件紹介する。なお、前回紹介した日立建機もこのプロセスを経ている。

〔サラヤ〕
戦後、わが国の学校や企業への緑色の石けん液のディスペンサー設置事業から始まったサラヤは、現在では「手洗い世界№.1」をめざし、「世界の衛生・環境・健康」への貢献を使命とする。

それゆえ、本業そのものがSDGs目標の3(保健)、6(水・衛生)、15(陸上資源)に深く関わる。目標5(ジェンダー)でも、中心的戦略として途上国で女性を中心に食品衛生や感染対策のインストラクターを養成している。

このような使命感をもつサラヤは、サプライチェーン(上流・サラヤ・下流)における自社事業とSDGsとの関連付けを169ターゲットのレベル(3.1などの番号)で丁寧に説明している(図表2)。

たとえば、目標3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)では、13あるターゲットのうち「下流」においてターゲット3.2(2030年までに、新生児および5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する)などの6項目が関連付けられている。

図表2:サラヤにおけるターゲットレベルでのSDGs関連付け (資料)サラヤ株式会社「SARAYA Sustainability Report2017」(8頁「サラヤのSDGs」から一部抜粋)

〔東京海上ホールディングス〕
東京海上グループの「サステナビリティレポート2017」のトップメッセージ(5頁)で、企業のSDGsへの貢献に対する期待感に触れつつ、「CSRは経営理念の実践そのものであり、社会課題の解決に取り組むことがグループのサステナブルな成長につながる」と明記している。

因みに、同グループの中期経営計画「To Be a Good Company 2017」では、安全・安心、地球、人がCSR主要3テーマのキーワードである。
同レポート(27頁)の『グループ取組とSDGsとの関係性~SDGsの目標達成にどのように貢献できるのか~』において、CSR主要3テーマの活動はSDGsの17目標と対応しており、その各活動と該当するSDGターゲット(1.5などの番号)との関連を丁寧に説明している(図表3)。

今後は、SDGコンパスにあるように、自ら特定した優先的課題に目標を設定し、「持続可能な目標」を企業運営に組み込むとしている。

図表3:東京海上グループにおけるターゲットレベルでのSDGs関連付け (資料)「東京海上ホールディングス 2017サステナビリティレポート」(28頁「CSR主要テーマごとのSDGsゴールに対するアクション」から一部抜粋)

次回は、SDGsとマテリアリティや中長期計画との連携に関するグッド・プラクティスを紹介する。

(つづく)

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

川村雅彦(オルタナ総研所・首席研究員)

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』など