人類が出せるCO2は1兆トン ⑬
SDGsへのコミットメントとは何か (その3)
~二極化する日本企業のSDGsへの取り組み~

これまで、SDGsへの取り組みの基礎であるバリューチェーン・マッピングとアウトサイド・イン・アプローチについて説明した。今回は、日本企業のSDGsへの取り組み姿勢に関する二つの傾向について述べる。

二極化する日本企業のSDGsへの取り組み

2015年9月のSDGs採択から2年半が経過し、日本政府や日本経団連の動き、あるいはNPOなどのさまざまなセミナーを背景に、日本企業においてもSDGsへの関心が高まっている。その結果、SDGsの認識と理解も次第に深まり、自主的に取り組みを始める日本企業が増えてきた。実際に、ホームページやCSR・サステナビリティ報告書において、SDGsへの言及や17目標(カラフルなアイコン)の自社事業への関連付けが増えている。

ただし、その内容をよく読むと、SDGsの本質を理解し本業の中核に組み込んで積極的にSDGs達成への貢献に取り組む企業が少なからず登場している反面、表面的に該当しそうな17の目標アイコンを単に既存の取組に貼り付けただけの企業もみられる。これは日本企業のSDGsへの取組の二極化と言えそうである。

特に後者では、意図的というよりも、むしろ無意識に企業の担当者や経営者が「17あるアイコンのいくつかを紐付けしたただけで、SDGsに取り組んでいるような気分になっている」のかもしれない。また、「紐付けはできたけれど、このあと何をすればいいのか分からない」との声も聞かれる。

どちらにせよ、どのようにして紐付けしたのかきちんと説明しなければ、「本気でSDGsに取り組んでいるのか」と疑念を抱かれてしまう。そうならないためには、SDGコンパスの「5ステップ」が役に立つ。特に本コラム(その12)で紹介したように、バリューチェーン・マッピングとアウトサイド・イン・アプローチが効果的である。

大事なことは 「SDGsとの紐付け」 ではない

確かに、SDGsはこれまでにない何か全く新しい考え方や行動を求めるものではない。しかし、地球社会は経済、社会、環境の面で大きな課題に直面している。SDGsはこの認識に立ち、2030年までの達成をめざして、地球社会のサステナビリティのために解決すべき優先課題を包括的に整理したものであり、「ありたい姿」の集大成である。

そこで、企業にはサステナビリティを事業戦略の中核に据え、事業を通じてSDGsの達成に向けた意欲的な貢献が求められている。逆に言えば、企業がSDGsを活用することで、中長期的な価値創造戦略を再構築し、自社のサステナビリティにつなげることができる。つまり、問われていることは、SDGs達成に向けた貢献の本気度であり、自社の既存の事業や活動にSDGs目標を紐付けることではない

繰り返すが、必要なことは、まず自社のバリューチェーンにおける自社事業や製品・サービスの環境・社会への正・負のインパクトを将来にわたって予測・分析し、SDGsマッピングを行うこと。そのうえで、SDGsとして自社の取り組むべき戦略的優先課題を決定(確認)することである。これが基本である。

さらに、本業の中核に据えるという意味では、SDGsと整合する自社独自の戦略的目標の設定も必要となる。これは既存の事業戦略だけでなく、CSR/CSVあるいはESGの戦略や体系の見直し・再定義にもつながる。具体的には以下のようなことが考えられる。

● バリューチェーンのSDGsマッピングによるマテリアリティの再定義!
● 2030年(以降)に向けた優先課題の中長期目標の設定とKPIの決定!
●  CSR/CSV計画ないしESG戦略・体系との連携・統合!
●  中長期の事業戦略と価値創造プロセスへの反映!
●  新規の個別事業や製品・サービスの開発!
●  経営トップの主導による全役職員の意識改革!

これらのことを経営トップや経営層が本当に納得し、社内外に明確な意思表示をすると、「SDGsのトップコミットメント」となる。次回は、そのグッド・プラクティスを紹介する。

つづく

 


オルタナ総研所長・首席研究員 川村雅彦

川村雅彦(オルタナ総研所・首席研究員)

前ニッセイ基礎研究所上席研究員・ESG研究室長。九州大学大学院工学研究科(修士課程:土木)修了後、三井海洋開発株式会社にて、中東・東南アジアにて海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988年にニッセイ基礎研究所入社。専門は環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告など。環境経営学会の副会長。著書は『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営パーフェクトガイド』など