CSRのキーワード

コンプライアンスは「法令遵守」と訳されますが、本来は社会の要請に応じ、組織の目的を実現すること(社会的要請への適応)を意味します。

コンプライアンス(Compliance)の語源「complēre」は「満たす」という意味で、「Compliance」は「柔軟性」や「調和」、工学用語では「しなやかさ」とも訳されます。

実は、「Compliance」は、1667年に発刊されたジョン・ミルトンの『失楽園・第8巻』の中で「すべてを充たしてくれる理想の女性」を表現するために用いられた言葉で、「男女の精神的関係」を表す言葉として使われていました。

夫婦関係や恋人関係を考えれば、「遵守」という言葉が馴染まないと分かると思います。期待されているのは、押し付けの要請に従うことではなく、相手の気持ちをどう受け入れるかという対話力なのです。

法令やリスク要因などは、その時々の社会の期待や価値観を規範化・文書化したものにすぎません。社会の環境や価値観がめまぐるしく変わる時代では、法令や基準自体が環境変化に適応できないこともあります。法令などの遵守にこだわると、潜在的なリスクを見落とし、大きな問題を引き起こす可能性もあります。

企業に求められるコンプライアンス

日々、私たちが直面する唯一絶対の解決策なき問題に対応するためには、対話を通して落としどころを模索する力を付けることです。一方的に説き伏せるような説得ではなく、異なる価値観を相互に受け入れながら、解決のための落としどころを模索し、「話の着地点」を見つける力を付けることこそが真の問題解決につながります。まずは相手の気持ち(ルールの趣旨や立法の背景を含む)を知ることが前提であり、コンプライアンスの本質でもあります。

自ら率先して社会の期待をとらえるこれからの時代は、与えられた物を守るという受動的な対応から、率先して社会の期待をとらえ、解決方法を模索し、行動に移す、能動的な対応に変える必要があります。法やルールは社会の変化に応じて形を変える生き物です。社会の期待や価値観の変化を受け入れるという点ではコンプライアンスもCSRも本質は同じです。

コンプライアンスやCSRへの取り組みを通して、社会の要請や期待をリスクとして早期に認識し、必ずしも文書化されていないことに対しても、積極的に、柔軟かつ的確な対応が必要です。価値観が大きく変化する社会に柔軟に応えるためには、環境変化に対するアンテナを高く張り、感受性を磨き、社会からの要請や期待を正確にとらえ、あらゆる環境変化を「自分ごと」化して取り込む習慣を付けることです。

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[新]CSR検定3級公式テキスト2016改訂版 p40 -41「企業に求められる必要な対話力は」(大久保 和孝)から抜粋