福井県大野市は、地方創生の一環で東ティモールに給水施設を設置する支援を2016年から始めた。名水の町として知られる同市は、おいしい「水」を使った市のブランド化に取り組んでいる。同市は2017年からの3年間で30万ドル(約3400万円)を寄付金やふるさと納税で拠出し、東ティモールのエルメラ県とアイナロ県に6基の給水施設を設置する計画だ。(オルタナ編集部=小松 遥香)

水を汲みに行く東ティモールの子どもたち

大野市も多くの地方自治体と同じく、人口流出に頭を抱えている。現在の人口は約3万4000人。2000年から約4000人減っており、高齢化率は30%を超えるという。同市では、県外流出よりも県内の流出人口の方が多い。

四方を山に囲まれた大野市は、湧水地が至るところにある水に恵まれた土地だ。今もなお、約6割の世帯は地下水で暮らす。同市は過去に井戸枯れをした経験から、国内でも有数の水対策を行い、良質な水を守ってきた。水は、人々の暮らしと文化、歴史を育んできた市のアイデンティティだ。

東ティモールは、アジアで最も水道の普及が遅れている国。5歳未満の死亡率もアジアで2番目に高い。東ティモールに水施設の支援を行うことで、同市の水が世界に誇れることに気付いてもらい、故郷に誇りを持ち、大野市で暮らす良さに気づいて欲しいという思いが支援には込められている。これまでの一年半で、1000万円を超える支援金が集まった。

今回の支援では、日本ユニセフ協会(東京・港)を通じて、東ティモールに3年間で6基の重力式給水システム(GFS)を設置する。GFSは標高の高い場所にある泉や湧き水から重力を利用して水道管で麓まで水を設備で、山岳地帯の広がる同国に適している。

最初の2基は、2017年7月に完成。大野市は国内外のNGOと協働して、GFSを設置した後も管理や徴収制度の指導、学校での啓発授業などを支援していく。ゆくゆくは、市民間の協力も目指していく意向だ。

このプロジェクトは、「水への恩返しCarrying Water Project(キャリングウォータープロジェクト)」と名付けられ、名水を使ってできた特産品の販売などにも力を入れている。

同市は市民への報告会も定期的に行い、市民とコミュニケーションをとりながら、プロジェクトを進める。地方創生が表面的なもので終わらないために、水が大地にじわじわと浸透していくような着実なブランディングを目指す。