Interviewee
川口 均 氏(日産自動車・専務執行役員 CSO)

Interviewer
川村 雅彦(オルタナ総研フェロー)

右:川口 均 氏(日産自動車・専務執行役員 CSO) 左:川村 雅彦(オルタナ総研フェロー)

右:川口 均 氏(日産自動車・専務執行役員 CSO) 左:川村 雅彦(オルタナ総研フェロー)

CSOとはChief Sustainability Officerの略で、企業のサステナビリティ戦略の中核を担う非常に重要な役割を担うポジションだ。日産自動車の川口均専務執行役員は、カルロス・ゴーン社長から直々の要請で新設のCSOに就任した。日産こそがサステナブルなモビリティ社会を実現する企業である、と自負する川口専務執行役員に、日産のCSR/CSVの考え方や取り組みを聞いた。

CSOとしての使命

川村:グローバル企業でのCSOの役割や位置づけなど、ご自身ではどのようにお考えでしょうか。

川口:CSOという職務に就いて改めて気づきましたが、日本企業にはCSOがあまりいない、むしろ欧米の方が先行しているようです。日本では言葉自体をほとんど聞くことがありません。このCSOという役職の意義を広めていくことも私の役割のひとつと考えています。

川村:日産自動車はバリューチェーン全体でCSR/CSVを推進されていると理解しています。そこで、まず日産のCSR/CSVの基本的な考えをお聞かせください。

川口: 私は日本自動車工業会(自工会)の理事をしていますが、自工会の中でもサステナビリティという言葉が重要になってきました。特に自動車業界はガバナンス、コンプライアンスなどが致命的な問題になりやすく、CSRという守りをしつつ、あわせてCSVという考え方で企業価値を創造していかなくてはならないと考えています。

川村:クルマを通して社会的課題を解決する、ということでしょうか。

川口:おっしゃる通りです。社会課題を解決することはクルマ会社の使命であると同時に戦略でもあります。日産が目指しているのは、走行中のCO2排出をゼロにする「ゼロ・エミッション」と日産車がかかわる交通事故の死亡・重傷者を実質ゼロにする「ゼロ・フェイタリティ」です。企業として守りながら攻めるという姿勢です。

川村:その考え方は、いつ頃から打ち出されているのでしょうか。

川口:2015年より打ち出していますが、会社の内外により浸透・普及させてゆくこともCSOとしての私の役割です。

川村:社外だけでなく、社内での意味も大きいようですね。川口さんを含め経営陣の価値観の共有はいかがでしょうか。

川口:社内での価値観としての共有は、まだ十分とはいえないと感じています。企業としては市場シェアを上げ、利益を出していきたい。しかも競争がグローバルになっている。しかし、企業経営として先を急ぐと不祥事につながりかねない。

来年度から新しい中期経営計画に取り組み始めますが、その中でサステナビリティを再認識する機会を設ける予定です。経営陣はもちろん、従業員やサプライヤーなど含めて、意識改革をしていきたいと思っています。

自動車業界における協調と競争

川村:走行中のCO2排出量を削減することやAI、カーシェアリングなど社会のモビリティをけん引するのは自動車業界だと思います。その中でサステナビリティが生き残り戦略そのものになってきたようです。

川口:クルマは人々の生活の利便性を高めることに貢献してきた、と言えるでしょう。一方で地球環境に与えてきた影響も少なくありません。環境を保全することとクルマがもたらす生活をもっと楽しく快適にすることを両立させねばなりません。

日産は2050年までに新車のCO2排出量を2000年比で90%減らす必要があると試算しています。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの性能向上に加えて、ゼロ・エミッション車であるEV(電気自動車)を投入するなど、ビジネスモデルそのものを変え、次の100年を見据えて、次世代車の開発に向けた努力が必要です。

川村:そこでの競争ということですね。

川口:競争は始まったばかりです。当社であればEVの普及を中心に置いており、加えて燃料電池車の投入も見据えています。2015年12月にCOP21において採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を2度未満に抑えることが目標として掲げられました。運輸部門は温室効果ガス排出量の14%を占めると言われています。目標達成のために未来に向けた動きが重要です。

川村:地球全体がサステナブルでなければ、ビジネスが成り立たないですからね。

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