シリーズ「人類が出せるCO2はあと1兆トン」⑪

SDGsへのコミットメントとは何か (その1)
~17の目標を見て、SDGsを分かった気になっていないか?~

2015年9月に国連総会でSDGs(正確には、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」)が採択され、2年半が過ぎようとしている。この間わが国においては、政府が2016年12月に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を発表し、2017年10月には外務省が「ジャパンSDGsアワード」を創設した。さらに、2017年11月には日本経団連がSDGsを踏まえた新たな「企業行動憲章」を発表した。

このような背景のなかで、わが国でも次第にSDGsの認識が深まりつつあり、とりわけ企業では具体的な取組がみられるようになった。しかし、SDGsの本質を理解して本業で取り組む企業がある反面、表面的に既存の取組とSDGsの17目標を関連付けた(アイコンを張り付けた)だけの企業も散見される。特に、後者では意図的というよりも、それで「取り組んでいる気になっている」ことが懸念される。

SDGsは、持続可能な社会・環境を実現するべく2030年の達成を目指した17の目標と169のターゲットである。そこで、本稿ではSDGs(2030アジェンダ)の狙いや求めていること、そして企業向けの導入指南書たる「SDGコンパス」の要点を再確認したい。

【SDGs三部作の狙い】

一口にSDGsと言っても、実は、三種のイニシアチブが公表されている。

(1)持続可能な開発のための2030アジェンダ(第70回国連総会にて採択)
◆構成:前文+宣言+SDGs
◆前文の要旨:人間、地球、繁栄と平和のための目標群と行動計画
⇒グローバルレベルの社会的課題の解決(最大の課題は貧困と飢餓の撲滅)
⇒「誰一人取り残さない」
⇒すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等をめざす
⇒持続可能な開発の三側面(経済・社会・環境)の調和
⇒あらゆる主体が取り組む

(2)SDG Compass:SDGsの企業行動指針(GRI、UNGC、WBCSDにて作成)
◆基本認識:人類は、経済・社会・環境で大きな課題に直面
⇒2030年に向けた「世界の優先課題とあるべき姿」を明示
(注)『めざすべきゴール』を明確にしたものであり、日本企業の誤解しやすい実現可能性の積み上げによる『必達目標』ではないことに留意する必要がある。
◆目的:企業はSDGsをどう活用するかの指南書
⇒企業がサステナビリティを経営戦略に統合するツールと知識を提供
⇒影響評価、戦略的優先順位の決定、目標設定、報告に関するSDGs導入指南書

(3)SDGs Industry Matrix:業種別SDGsの手引き(UNGC、KPMGにて作成)
◆目的:企業のSDGsへの関心を戦略的な事業に転換する手引書
⇒CSVの視点から、企業の社会・環境課題に関するビジネスチャンスを提供する
⇒CSVは市場潜在性、社会的要請、政策の連携を表わす
◆特徴:各SDGについて業種特性に応じた取組のアイデアや実例を示す
製造業、食品・日用品、金融サービス、エネルギー・地下資源、化学工業、医療、運輸、気候変動(抜粋)
◆SDGsは、企業に対し課題解決のための創造性とイノベーションを求める。
◆シナジー:国連グローバル・コンパクトへのコミットメントを活用

【バリューチェーンへのインパクトからみたSDGsマッピング】

それでは、実際にSDGsを経営に組み込むにはどうすればよいのだろうか。SDGコンパスでは5つのステップを提示している。すなわち、①SDGsの理解、②優先課題の決定、③目標の設定、④経営への統合、⑤報告とコミュニケーションである(図表1)。

図表1:SDGsを経営に落とし込む5ステップ(資料)SDGコンパスを基に筆者にて作成

SDGsの本質を理解したら、次に17あるSDGsの中からバリューチェーンを含む自社事業のかかわる重要課題(マテリアリティ)を特定する必要がある。ここが最初のポイントとなるが、別の表現をすれば、自社事業が環境や社会に及ぼすインパクト(影響)を自ら特定することになる。つまり、17目標すべてに愚直に取り組むことを意味しない。

なぜならば、厳密にいえば、プロダクトとプロセスならびにバリューチェーンは企業ごとに異なるからである。ここで効果的な手法が、SDGコンパスが推奨する「バリューチェーン・マッピング」と「アウトサイド・イン・アプローチ(社会基点)」である。

本稿では前者について述べるが、現在と将来におけるSDGsの諸課題に対する負と正のインパクトを与える領域を特定する必要がある(図表2)。ISO26000では、これをCSRデューデリジェンスと呼ぶ。要点は以下のとおりである。

・自社のバリューチェーン全体のマッピングを広い視野で実施し、
・SDGsの諸課題に対して直接的・間接的な負と正の影響を及ぼす領域を特定する。
・この関連性分析を基に、自社の事業活動や製品・サービスの及ぼす現在の影響と将来考えられる影響について自己評価を行う。

図表3にバリューチェーン・マッピングの内部検討のためのシートを示す。ここで大事なことは169のターゲットレベルで精査することである。そうでなければ、17の目標レベルの理解(思い込み)で上滑りしてしまう可能性が高い。なお、「正の影響の強化」はCSV的、「負の影響の最小化」はCSR的な位置づけと考えられる。

(アウトサイド・イン・アプローチは、次回述べる)

図表2:SDGsのバリューチェーン・マッピング(インパクト領域の特定)の例示(クリックで拡大) (資料)SDGコンパスを基に筆者にて作成

図表3:SDGsのバリューチェーン・マッピングの検討シート(クリックで拡大) (資料)筆者にて作成