◆2級教科書ポイント解説(第5章CSR/ESGの新しい流れ)
講師:町井則雄氏(株式会社sinKA代表取締役)

町井則雄氏(株式会社sinKA代表取締役)

SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定の採択など、パラダイム転換が起きるなかで、sinKAの町井則雄代表取締役は、「日本はルールメーカーになれず、損な役回りになっているのではないか」と指摘した。世界では、化石燃料への新規投資停止、化石燃料関連企業からの投資撤退、再生可能エネルギーへの投資拡大など、急速に変化し、社会貢献などに熱心な企業に重点投資する資金の残高は全世界で21兆ドル(約2500兆円)に上るという。日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2016年度運用益7.9兆円のうち、1兆円をESG投資にまわすことを表明している。続けて、GPIF高橋則広理事長が語った「ESG投資は長期的に利益が出る」という言葉を紹介。町井代表は「CSRはトレンドなどではなく、普遍的な企業価値と戦略の礎」とまとめた。

◆企業事例9:富士ゼロックス
講師:吉江則子氏(富士ゼロックスCSR部長)

吉江則子氏(富士ゼロックスCSR部長)

富士ゼロックスのトップは一貫して「CSRは経営そのものである」と社内外で宣言し続け、事業とCSRを統合することで新たな成長と価値創出に挑戦するという強い決意を述べてきたという。同社は創業時から「良い会社」であることを目指し、「よい会社構想(富士ゼロックスのトリプルボトムライン)」として、「強い(経済価値)」「やさしい(社会価値)」「おもしろい(人間価値)」を掲げている。同社の吉江CSR部長は「経営とは経営者だけのものではなく、毎日の仕事である。いかに毎日の仕事にCSRを統合していくかに取り組んできた」と話す。企業の評価についても「顧客の購買基準がQCD(品質・費用・納期)からQCD+プロセス(どうやってつくっているか)に変化してきた」とし、2007年に資材調達の調達方針にCSRを盛り込んだ。従業員支援プログラムにも力を入れ、富士ゼロックスシンセン(中国)では、従業員の悩みのケアなどを行った結果、ワーカーの離職率は深圳市平均(約10%)の3分の1程度を維持しているという。

◆企業事例10:JT
講師:永田亮子氏(日本たばこ産業株式会社執行役員社長付)

永田亮子氏(日本たばこ産業株式会社執行役員社長付)

永田氏はJTのCSR活動とその推進方針、重要課題の特定と取り組み、さらにCSRコミュニケーション、外部からの評価について説明をした。事業を通じたCSR活動の例として、JTグループ独自の児童労働撲滅プログラム「ARISE」を紹介した。永田氏は、児童労働問題は貧困や慣習、教育などが複雑に絡み合い単一企業での解決が困難とし、専門機関やNGOとの協働が不可欠と説明した。外部評価についてはCDPなどのアンケート方式の場合、英語によるニュアンスの伝え方や文章自体によって評価が変わってしまうことに言及した。永田氏は、その上で他社の評価との比較や客観的な評価として、外部レポートを絶対視することなく、どのように捉え、使用するかが重要であると述べた。

◆ワークショップ:CSRレポーティングⅡ

ワークショップ「CSRレポーティングⅡ」で

ワークショップでは冒頭にキリンとフジクラの2社のCSRレポーティングの事例が示された。この中で具体的な報告書の作成方法や、「レポートをしても投資家視点では社会貢献活動が評価されないことがある」といった課題などが提示された。事例発表後、参加者はそれぞれ4人ずつのグループにわかれディスカッションと発表が行われた。参加者からは「万人向けの統合レポートでは投資家にとっては物足りない。様々なサプライヤーがいる中で、どこに向けて訴求する報告書なのか、または全体に向けた報告書なのかを明確にすることが重要だ」という発表があった。「投資家向けの報告書と考えた場合には、社会貢献がどのように企業に価値をもたらしているかのストーリーを用意することが必須」という意見や、「そのための見せ方として、編集面では写真やデータを取捨選択し、誌面上の配置などを工夫することも必要だ」といったCSR報告書作成に関する具体的な意見も交わされた。