田中信康のESG情報発信のススメ(12)三井物産、サステナビリティ委員会を新設―部門横断で持続可能性を追求―

国内の大手企業は今、自社のCSR体系を見直し、取り組みの深度を強めている。ある企業は事業との融合を、より先進的な取り組みを推進する企業は、事業との統合に向けたアクションプランを積極的に開示するなど統合的思考に向けた動きが活発化している。

三井物産は今年5月、サステナビリティの専門組織「サステナビリティ委員会」を新たに設置した。従来までの組織を改編し、発展性を持たせ、まさに各事業本部との連携を強めた事業活動への展開を目指しており、今後の取り組みやESG情報の開示にも期待が高まる。

今回のコラムでは、これまでの志向とは形を変え、同社経営企画部業務室次長の高堰博英さんへの取材内容をご紹介する。

(株式会社オルタナ オルタナ総研 事務局長 / サンメッセ株式会社 執行役員 田中信康)


「良い仕事」とは何か 試行錯誤から生まれた発想

田中:今回のサステナビリティ委員会の設置は、これまでの活動や取り組みが基盤になっていると思います。まずは貴社のCSRの取り組みについてお聞かせください。

高堰:少しさかのぼりますが、2004年に経営会議の下部組織として「CSR推進委員会」を発足し、MVV(経営理念:Mission・Vision・Value)とCSR基本方針を掲げてCSRに取り組んできました。その後、2006年に「CSR推進部」を設立し、「良い仕事」という言葉を掲げ、社員一人ひとりが日々「良い仕事」を実践することこそが三井物産のCSRであるといった価値観の共有を推進してきました。

2010年からは、経営企画部が事業活動を通じたCSR経営の中核母体となり、環境・社会貢献部などCSRに関連するさまざまな部署と連携して、事業活動と一体となったCSRの取り組みに注力しています。

田中:CSRという部門名称にはこだわらず、本当の意味で取り組むための変化ということですね。

高堰:はい。それでもなかなか浸透しにくかったのですが、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードのダブルコード、PRI(責任投資原則)やGPIFが今年7月にESG指数を発表するまでの流れもあり、外部環境も随分変わってきて、もう一段レベルを上げねばならないという機運が高まってきました。社内での問いかけはもちろん、社長をはじめ幹部に対してさまざまな視点で相談したり、社会の中での自社のスタンスを問う機会も増えました。

そうした社内の対話の中で、CSRの重要性は変わらずとも、もう一段踏み込んだメッセージが必要となり、その結果、サステナビリティというキーワードにたどり着きました。サステナビリティという言葉には旧三井物産の初代社長益田孝の言葉である、「眼前の利に迷い、永遠の利を忘れるごときことなく、遠大な希望を抱かれることを望む」にも込められた、未来への思いや社会と事業の持続可能性に対する考え方が引き継がれ、示されていると感じています。

田中:まさに、社会が持続可能でなければ、会社も持続可能にはならない。会社が持続可能でないと社会的責任が負えないということですね。

高堰:やはり近視眼的ではなく、長期的視点を持たねばなりません。社長の「未来づくり」「暮らしづくり」「国づくり」というメッセージも、我々の大切なミッションの一つだと思っていますし、MVV(経営理念)にも関わってきます。サステナビリティ視点をもって、役職員がどう対話をしていくかが大切だと思っています。