シリーズ「人類が出せるCO2はあと1兆トン」

「ビッグ3からスモール100へ」 ~気候変動がもたらす自動車メーカーの世代交代~

すでに本コラムで述べたように、2050年までにZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)の100 %達成を目指すアメリカのカリフォルニア州は、「ZEV規制」として2018年からガソリン車とディーゼル車の販売比率を制限する。この動きは米国内に拡がりつつある。(オルタナ総研所長・首席研究員=川村雅彦)

本年7月にはフランスとイギリスが、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を国内で禁止する方針を明らかにした。世界最大の自動車市場をもつ中国は、先ごろ2019年から新しい「NEV規制」の導入を決定した。インドも2030年までのEV100%普及を目指す。

これら一連の内燃機関を搭載したエンジン車に対する規制強化は、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の導入促進による「自動車駆動源の世代交代」を意味する。ここでは、それに伴う「自動車メーカーの世代交代」について考える。

「ビッグ3からスモール100へ」の意味

「ビッグ3からスモール100へ」という言葉をご存知だろうか。これは自動車の主役が「ビッグ3」から「スモール100※1」に代わることを意味する。つまり、20世紀を象徴する米国の大手自動車メーカーが、もはや21世紀の自動車産業をリードはしないということである。

ビッグ3とは、アメリカの3大自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラー※2を指す。その凋落の背景には、さまざまな要因が指摘されている。もともと、いわゆるアメ車は、広大かつ多様な地理的条件を持つ都市間の長距離走行を念頭に、大型車が設計されてきた。

しかし、国内需要に眼を奪われて、世界的な燃費向上や環境配慮における戦略的対応を怠ったとの指摘も多い。近年では気候変動(地球温暖化)への対策として、自動車の脱化石燃料化たる「脱エンジン車」の世界的な潮流が背景にあることは間違いない。

エンジン車より構造が単純で部品数も少ないEVやFCVが主流になってくると、自動車は従来に比べてつくりやすくなる。そこで、既存の大手自動車メーカーによる寡占状態が終わり、世界中で数多くのベンチャー企業あるいは異業種からの参入企業が登場する可能性が高い。

現に、そのような新興企業が複数登場している。CEOがアメリカのシリコンバレー出身のテスラ・モーターズ、中国深圳市のバッテリーメーカーのBYDオート(比亜迪汽車)などが注目を浴びている。いずれも有力なEV専業メーカーとなったが、掃除機で有名なイギリスのダイソンも2020年までにEVに参入することを表明した。今後は意欲と能力があれば、誰でも自動車をつくることのできる時代を迎えた、と言っても過言ではない。

(※1)東京大学特任教授の村沢義久氏(現在は環境経営コンサルタントで合同会社Xパワー代表)が、2009年に出版した著書『日本経済の勝ち方-太陽エネルギー革命』(文春新書)で、世界の自動車業界の見通しに関して、「スモール・ハンドレッド(Small HundredsあるいはSmall 100s)」を初めて使ったと言われている。正確には「100社単位」の意味であろう。

(※2)現在は、イギリス・ロンドンに本社を置く持株会社であるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の子会社であるFCA US LLCの自動車ブランドの一つである。

「ビッグ3」の動き