kamaura3回目
川村雅彦のCSR一刀両断(3)人類が出せるCO2はあと1兆トン①
――カーボン・バジェット(炭素予算)という考え方


2℃目標とカーボン・バジェット

2015年12月のCOP21で採択され、2016年11月に発効したパリ協定に基づき、世界の平均気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えるために、世界は21世紀後半にCO2排出量の実質ゼロを目指す。ただし、世界のCO2排出量といえば、中国と米国で4割を超し日本は4%未満などと、各国の年間排出量が話題になることが多い。

しかし、気温上昇は大気中の「累積CO2排出量」とほぼ比例関係にあることが分かっている。世界の科学者集団であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、この2℃目標のためには、今後、人為起源の累積CO2排出量を約1兆トン(1000ギガトン)に抑える必要がある。このことは意外と知られていない。

1兆トンと言われてもピンとこないが、ごく簡単に説明すると、次のようになる。すなわち、平均気温の2℃上昇に対応する累積CO2排出量は約3兆トンと予測されているが、実は人類は既に約2兆トン排出してしまっているので、残されたCO2排出量は約1兆トンということになる。

これは今後人類が排出できるCO2総量の上限であり、手持ちの「予算」という意味で「カーボン・バジェット(炭素予算)」と呼ばれる。しかも、現在のペースでCO2を出し続けると、おおよそ30年でこの予算を使いきってしまう。因みに、2014年の世界のエネルギー起源CO2排出量は322億トンであった。

参考)気温上昇と温室効果ガス(GHG)濃度との関係:450シナリオ
IEA(国際エネルギー機関)は、IPCCのシナリオ分析結果から、2℃目標のためには大気中のGHG濃度を450ppmに抑える必要があるとして、エネルギー利用などに関するいくつかの到達経路を「450シナリオ」として策定している。
産業革命以前のGHG濃度は280ppmであったが、現在、既に400ppmを超えている。近年のGHG濃度上昇は年当たり約2ppmであることから、450ppmに達するのに何年かかるか計算できる。概算ながら、(450ppm-400ppm)/年2ppm=25年となり、上記のカーボン・バジェットの残り30年と概ね符合する。

炭素生産性の向上とデカップリング