明けましておめでとうございます。昨年は英国のEU離脱、米国大統領選のトランプ氏当選など、グローバリゼーションとそれに対する反発の構図が大きく浮き彫りになったという意味で、歴史の転換点を感じさせた年でした。(オルタナ編集長 森 摂)

mori160927私が最初にその相克に触れたのは今から15年以上前、ロサンゼルス駐在時に通った、メキシコのマキラドーラ(保税特区)でした。サンディエゴからティファナへ国境を抜けると、日系メーカーのテレビや自動車部品の工場が乾いた丘の上に並び、米国向けの製品を盛んに生産していました。

当時、カリフォルニア州の最低賃金が時給8ドル。メキシコ側では日給8ドル。つまり人件費は8分の1以下でした。ティファナにはたくさんの人が集まる一方、貧富の格差も顕著で、治安は悪化し、犯罪も多発していました。サンディエゴとティファナは同じ気候のはずなのに、前者は緑にあふれ、後者は砂煙にまみれた町でした。

マキラドーラはメキシコを幸せにしているのだろうかーー。その答えになるかは分かりませんが、現地で乗ったタクシーの運転手の言葉が今でも忘れられません。「メキシコが幸せだったのは1950-60年代。今はダメだよ」

実は、米国の中間層にとっても1950-60年代の方が幸せだったようです。多くの工場は米国の中にあり、たくさんの雇用が生み出されていました。米国から多くの工場が海外移転すると、雇用の主体は第2次産業から第3次産業に変わりました。金融で稼げるような人はわずかで、多くは賃金が安いサービス業に移りました。

トマ・ピケティがつくった「米国の上位1%富裕層の所得が全体に占める割合(1913-2013)」を見ると、その推移は顕著です。米国で上位1%富裕層の所得シェアは、世界恐慌までは20%以上でしたが、その後、徐々に低下し、1950-80年は10%前後にまで下がったのです。これは所得の分配がうまく進んだことを意味します。