下田屋毅の欧州CSR最前線(52)

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国際労働機関(ILO)の推定によると、全世界で2100万人が強制労働や人身取引、借金のかたによる労働など、奴隷のような環境で働いているとされる。その被害者の90%は企業活動により搾取され、企業は年間1500億ドルの不法利益をあげているとされる。(在ロンドンCSRコンサルタント=下田屋毅)

2015年3月に制定された現代奴隷法

2015年3月に制定された現代奴隷法

このような現代の奴隷労働や人身取引を根絶するために2015年3月、世界に先駆けて英国で現代奴隷法が制定された。この法律は、日本企業にも影響が及び、対応が始まっている。今回は、その最新動向と日本企業の対応状況についてお伝えする。

この法律は企業にサプライチェーン上の奴隷制を特定させ、根絶するための手順報告を求めるものだ。対象になるのは、英国で活動する世界での売上高が3600万ポンド(約50億)を超える企業だ。会計年度に1回、「奴隷と人身取引に関する声明」を発行することを求めている。そして2016年3月末日に会計年度が終了した企業から、翌4月1日から6カ月以内にこの声明を発行することになっており、今年9月末日にその最初の期限が来た。

国際NGOビジネス・人権資料センターのウェブサイトによると11月7日時点で、この声明を発行している企業は938社(うち日本関連企業56社)である。この法律では、英国政府は対象企業の声明が要求事項を満たしているかについて確認しないとしている。この法律が求めている仕組みは、企業に透明性を促し、市民社会やNGO、大学の研究者などからの監視の目を利用するところだ。

現時点では、関連団体やNGO、市民社会は、企業に現代奴隷制を確認する取り組みを進めてもらうことを第一に考えており、声明の内容について指摘をすることは考えていない。しかし企業は計画の実行、そして毎年ステップアップすることが求められており、来年度以降は内容が不十分な場合、それら組織からの指摘が始まる可能性はある。